3064 “もう一つの中国”への旅(旅302)

【知道中国 3064回】                      二六・九・廿

  ――“もう一つの中国”への旅(旅302)

上下2巻で合わせると1100頁超だが、1960年代後半から70年代半ばまでの我が国で展開された喧しいまでに過激で活発なヴェトナム戦争関連の報道・論調を思い起こしながら読み進むと、興味津々のままに一気に最終頁となり、「結局、われわれは大したことを学んでいなかったということだ。しっかり学んでいれば、イラクに侵攻なんぞしなかっただろうから」との一言で終わる。さて文中のイラクは、いずれイランと上書きされることがあろうか。なお原典『VIETNAM  An Epic Tragedy, 1945-1975』の初版出版は2018年。

以下、心に引っかかった個所を拾っておくと、

「ハノイの政治局と南ヴェトナム解放戦線は、南ヴェトナムの民衆を、軍閥や地主から解放したうえで、いっそう苛酷なスターリン式統治のもとに置いただけである」

「(現代のリベラルデモクラシー政権下の市民たちは)しばしば多文化において献身的な支持を得ている者たちに、感情移入をした。だがしかし、歴史を見れば、数々の非人道的な運動が若い男女に道を誤らせ、またさまざまな犠牲が彼らの名において行なわれもしたのである」

「(ニューヨーク・タイムス、ワシントン・ポスト、CBSテレビなどの米国主要メデイアでは)北ヴェトナム軍側が、(米軍より)はるかに甚大な戦死者を出していることは、一切触れられなかった」

「共産主義者は、人民の生命を含むあらゆるものを犠牲にできる」

「ヴェトナムの共産主義者は、サイゴン政権に比べると、道徳的に優位な勢力を代表しているとの主張は、いささか噴飯ものである」

「(大統領選をめぐるワシントンの不手際が)どうやら勝てそうだという予感、勝利は目前だという確信を、結果的に北ヴェトナム側に与えてしまった」

「米国の各種情報機関の途方もない規模を考えた場合、北ヴェトナムについて、とくにハノイの共産党政治局について、ワシントンは空恐ろしいほどに理解していなかった」

「勝利のために必要なことを行なう準備ができていないなら、戦いに打って出てはならないのである」

「結局、革命戦争として始まったものは、北による南への昔からあるごく普通の侵略行為に変わり果てた・・・〔中略〕・・・ここサイゴンにあって、反共主義者の運命に関する一部の外国新聞の、一人悦に入った記事を読んでいると不快な気分になる」

「ハノイの共産党は、腐敗し、しかるべき能力に乏しい官僚機構と野蛮な治安組織に権力を集中させていた。彼らは最高の住宅、最も豊かな農場、闇で手に入れる贅沢品の接収に血眼になっていた」

「あらゆるランクの共産主義者が個人の住宅に入り込み、気に入ったものがあると、そのまま持ち去った。北の人間は南の人間を、とくに打倒された政権の追従者というレッテルを貼れる人間を、一種の金づる、勝利品を奪える対象と見なした」

「ホー・チ・ミンやレ・ズアンに関し、西洋の左翼人士が唱えるあらゆる称賛の言葉にもかかわらず、彼らが主宰しているのは、基本的に非人間的な全体主義政権である」

「ハノイの虚言癖は、いまも組織内に制度として存在し、しかもいまだ明示化されてはいない」

やはり極め付きは、「(南ヴェトナムの)ブラック・マーケットにおける為替取引は数千人に富をもたらしたけれど、この方面に携わる人間の大半は中国系で、彼らは米ドルやアメリカの軍票を確保するルートを持っていた」だろう。やはり、そうだったのか。「この方面に携わる人間の大半は中国系」の一言には、極めて激しく納得するほかない。《QED》