【知道中国 420回】 一〇・七・念三
――タイの中国傾斜は、いよいよ深まりそうだ・・・
【知道中国 418回】でタイの中央銀行総裁人事の人脈的背景を俯瞰してみたが、直近のタイと中国の関係について、事実のみを時系列で追ってみることにした。
■7月16日=タイ外務省主催で「タイ―広東省合作委員会」。タイ側委員会主席はティラクーン外務事務次官。広東省側代表は万慶良副省長。双方による今後1年間の経済合作が議題。昨年6月の訪中時にアピシット首相が広州市を訪問し黄華華広東省省長と広州市長と会談した際、農業や観光面での合作に加え双方の投資を促すことで合意。この合意に基づいての委員会発足となる。広東省代表団はタイ副首相、外相、農業・組合相、バンコク都知事と会談。バンコク西郊のナコンパトム県の果樹園を視察。同地産出の果物を11月広州で開催の第16回アジア大会選手用に提供。
■7月16日=ステープ副首相、中国共産党の招待で家族と共に訪中。目的は①中国共産党主催のアジア太平洋政党会議出席。②貧困対策に関する経験交流。③北京・天津間の高速鉄道試乗。④上海万博視察。⑤タイの鉄道網整備に関する投資問題話し合い(アピシット首相の指示あり)。同行者はウィーラチャイ科学技術大臣(同大臣については【知道中国 418回】参照のこと)、外務省秘書長、民主党執行委員など。
■7月18日=タイ政府観光局北京事務所が発表したところでは、2010年に訪タイの中国人観光客は前年比10%増の110万を予想。2011年3月31日から、タイ政府は中国人旅行客の査証費用を免除すると共に、1万ドル以上の旅行保険を掛けた旅行客にかぎり、タイ国立公園入園料を半額とする。政府の措置に沿ってホテル料金を最大限半額にするなど、民間業者の中国人旅行客誘致策も積極的に展開されている。
■7月18日=世界規模で開催される「中華小姐(ミス中華)」コンテストのタイ地区予選開催。中国語による自己紹介などの審査を経て現役の華人女子大生が選ばれる。マレーシア地区代表と競い勝利した場合に世界大会へ。
■7月19日=シリントーン王女、4月に続き今年2回目の訪中。81年の最初の訪中から数え通算で31回目となる。目的は①上海交通大学復健工程(リハビリ)研究所開所式主宰。②残障人復健技術学術検討会出席。③上海生物科技研究院、上海応用物理研究院など学術施設見学。④上海万博見学。
■7月19日=ステープ副首相、ポスト胡錦濤の有力候補である李克強副首相と双方の経済協力、ことに投資問題につき会談。李は「中泰一家親(中タイは同じ家族)」を強調。
■7月20日=シリントーン王女、上海万博へ。会場では特にCPのパビリオンである「正大美食館」を訪れ、陪席したCP総帥のタニン(謝国民)を横に立たせ「正統大雅(正統にして大いに雅なり)」と得意の筆を揮った。因みに、正大はCPの漢字表記のブランド名。タイではCP(チャローン・ポカパン)集団だが、中国では正大集団での名で親しまれている。であればこそ中国市場を見据えるなら、正大にとって「正統大雅」の漢字4文字はこの上なく有力なキャッチコピーとなるはず。もちろんタイでもCPはこの時の写真を大々的に使い宣伝に務めるだろう。なにせ正大(CP)はシリントーン王女特製のキャッチコピーを使い、王女様御用達のブランドとなったからだ。
なにはともあれ、タイがみせる急激な中国傾斜から眼が離せないような情勢だ。 《QED》