【知道中国 414回】                                              一〇・七・初九

――アナタ達に・・・いわれたくはない

   『在戦争与和平問題上的両条路線』(人民日報・紅旗雑誌編輯部人民出版社1963年)

 かつて米帝国主義への対応と世界革命をめぐって、中国とソ連の理論部門が脳筋(ノウミソ)をフル稼働させ、持てる智慧・知識を総動員し、相手をギャフンといわせようと絶対必死の攻防を展開したことがある。中ソ論争だ。今になって振り返ってみれば、なんの因果で両巨大共産党が激しい論戦を繰り広げたのか。全く莫明其妙(チンプンカンプン)。


 この本の副題は「五評蘇共中央的公開信(一九六三年十一月十九日)」。つまりソ連共産党中央からの公開書簡に対する中国共産党の5回目の公開反論である。書いたのは人民日報・紅旗雑誌編輯部であるから、当時の中国共産党の理論中枢ということになる。

 この本は「全世界は戦争と平和の問題を論じている。諸悪の根源である帝国主義制度は世界人民に数限りない戦争を嘗めさせ、2度に及ぶ世界大戦の惨禍をもたらした。
帝国主義の戦争は人民に限りない苦難を与えると同時に、人民を教えもする」と大上段に振りかぶり、ソ連を修正主義者と糾弾し、その欠陥を挙げて論駁する。いわく修正主義者は、

 第1に帝国主義を美化し、世界の人民闘争の視線を他に転化させようとしている。
 第2に帝国主義を側面援助し、新たな戦争の危機を隠蔽し、人民の闘志を挫こうとする。
 第3に戦争は人類を破滅に導くというデタラメで大衆を恐怖に陥れる。
 第4に正義の戦争と不義の戦争の弁別をせず、革命を認めない。
 第5に唯武器論を吹聴し、革命の武装闘争に反対する。
 第6に軍縮が世界平和に繋がるというデタラメを撒き散らし、民族は平等だという誤った考えをでっち上げる。
 第7に軍備削減によってムダを省き、浮いた予算で開発途上国の援助が可能とする。
 第8に帝国主義のために“和平戦略”とやらを助言する。
 第9に帝国主義に対し、国連運営に当たるべしというおべっかを使う。
 第10にアメリカ帝国主義に依存してこそ世界平和は可能となるという幻想をばら撒く。

 つまりソ連は暴力革命を放棄し恥ずかし気もなくアメリカ帝国主義の軍門に下った帝国主義の走狗だと揶揄し、破廉恥な修正主義であると糾弾し、以上の10ヶ条を世界の戦う人民に対する犯罪的行為だと強硬に論難し、反す刀でアメリカ帝国主義のデタラメを論う。

 第1にアメリカ帝国主義の軍事予算は平和時の最高水準を遥かに超え、すでに朝鮮戦争当時の基準を大幅に突破している。
 第2にケネディー大統領は最近、核武装を含む戦備の充足ぶりを豪語している。
 第3にアメリカの戦略目標統合参謀部は、ソ連を含む社会主義国家への核戦争計画を制定済みだ。
 第4にケネディー政権はアジア、ラテンアメリカ、アフリカでの軍事態勢を強化した。
 第5にケネディー政権は戦争指揮機構を強化・整備している。

 いわばアメリカ帝国主義が懸命に巧妙に戦争準備しているのに、ソ連修正主義は卑怯にもシッポを巻き哀れみを請うているのだ――中国共産党の主張は、どこまでも勇ましい。

 その時から半世紀余り。胡・温政権はソ連修正主義者への“心からなる忠告”を自ら踏みにじり、かつての米帝国主義路路線を無人の荒野を往くが如くに驀進中だ。  《QED》