【知道中国 413回】                                           一〇・七・初六

毛主席の“有り難い教え”に背いているヤツは、いったい誰だ・・・

『中国政府継続堅决執行毛主席的革命外交路線和政策』(人民出版社 1976年)

 全部で12頁。字数を数えると6000字ほど。値段が0.06元の外交パンフレットだ。当時の外交部長である喬冠華が第31回国連総会で行った演説を印刷したものである。

 各国代表を前に喬が演説したのは毛沢東の死から1か月ほど過ぎた76年10月5日で、翌6日には北京で四人組が逮捕されている。当時、北京では“毛沢東後”をめぐっての四人組対反四人組の闘争は熾烈を極め、超緊張状態であったに違いない。

 「本日、我われ中華人民共和国代表団はこの場に到り、本国連総会に出席することとなったが、いまやまさに我が国各民族人民にとっては、このうえなく深い悲しみの時となってしまった。9月9日、中国人民が最も敬愛する偉大なる領袖、導き手である毛主席は不幸にも逝去された。毛沢東主席のご逝去は、8億中国人民にとって計り知れない不幸であります。毛主席なかりせば中国革命の勝利はなく、今日の新中国もありえなかった。毛主席指導による中国革命の勝利なかりせば、世界が今日のような大きな変化を成し遂げることはありえなかっただろう。この上なく深い悲しみの底に打ちひしがれた中国人民は悲しみを力に変え、毛主席の遺志を継承し、毛主席が切り拓いたプロレタリア革命の事業を最後までやりぬくものであります」と切り出した喬は、次いで「毛沢東主席が深刻に分析し」たうえで提示した「3つの世界に関する偉大な戦略思想」から説き起こした。

 ――アメリカとソ連の超大国を第1世界、アフリカ・ラテンアメリカなど他の発展途上国を第3世界と位置づけ、その中間にヨーロッパ・日本・カナダなどの第2世界が挟まれているとする。第1世界は最大の圧迫者・搾取者であり、新たな世界戦争の策源だ。第2世界は第3世界を圧迫・搾取する一方で、超大国の圧迫・搾取・脅威をも受けている。帝国主義と植民地主義の圧迫と搾取を最も深刻に受けてきた広範な第3世界こそが帝国主義、殊に超大国の覇権主義に反対する主力軍である――。

 これが「3つの世界に関する偉大な戦略思想」の概要だが、喬は米ソ両超大国が進める軍縮を「論評を加える些かの価値も見出せない」とニベもなく否定した後、第3世界における民族解放、朝鮮人民の「自主と祖国の平和統一への正義の闘争」への支持を高らかに表明する。さらには「長期間にわたって鍛えられたアフリカ人民は冷静な頭脳を持つ。彼らは帝国主義、社会帝国主義が語る耳触りのいい話は信用しない。・・・『万悪の植民地主義、帝国主義制度は奴隷と黒人売買と共に起こり栄えたが、黒人(原文では「黒色人種」)による徹底的な解放によって滅びる』と毛主席が語るように、アフリカの前途は、無限に光り輝いているのだ」と、アフリカの将来を讃えていた。この演説から30有余年が過ぎたいま、中国はアフリカ各地のみならず第3世界で見境のない資源漁りを、醜いまでに推し進める。

 当時は第3世界を自認していたはずの中国だったが、第2世界を軽々と飛び越え、大変身、大々出世、いや大々々膨張。いまや威風堂々と第1世界の仲間入り。かつてのアメリカ帝国主義もソ連社会帝国主義も真っ青の超大国膨張主義路線を驀進中だ。となると態度は、勢い厭らしくも横柄になる。であればこそ、「国際社会における付き合いにおいて、中国人は断固として、徹底して、きれいさっぱりと、全面的に大国主義を消滅させなければならない」との毛沢東の呟きが、改めて懐かしく思い出されはしませんか・・・ネエ。  《QED》