【知道中国 394回】 一〇・五・念三
――ガキもオダテりゃ・・・リッパな革命戦士になりますよ
『小学教師用 普通話練習手冊』(本社編 文字改革出版社1973年)
普通話(=共通語)で全国を統一せよという毛沢東の大方針を確実に実行するため、この本は「小学校教師が普通話を学び、普通話を使って授業を進められるよう」に編集されている。いわば全国の小学校の教室で児童を前にした教師が方言を使わずに教えるための模範会話・用例集といったところ。とはいえ、時代が時代である。先生が教室で児童を指導する際に口にすることばが勢い革命的で政治性を帯びてくることは、致し方のないこと。いや至極マットーなことだった。
第1課の教師生活編をみると、「さあ皆さん、真剣に本を読み学習し、マルクス主義に通暁しましょう」「教育はプロレタリア階級の政治に服務しなければなりませんし、生産労働と結合する必要があります」「今晩、先生方は集会を開き、『共産党宣言』をしっかりと体得するために座談会を開くことになっています」「それでは黄先生に、どのように路線教育を施されたかを話して戴きましょう」
第3課の政治教育編では、「断固として階級闘争を忘れてはいけません」「我われを導く核心的な力は共産党なんです」「我われの思想を導く理論的な基礎はマルクス・レーニン主義です」「毛主席の革命路線は我が党の生命線です」「正確な政治的視点がなかったなら、とりもなおさず魂がないということなんです」「東の空が赤くなって太陽が昇ります。毛主席は中国人民の大きな大きな救いの星です」「我国はプロレタリア階級が独裁する社会主義国家です」「中国人民解放軍はプロレタリア階級独裁のための堅固な基盤です」「帝国主義と全ての反動派は全て張子の虎です」「劉少奇とその仲間達がでっち上げてばら撒く『天才論』を完膚なきまでに批判しましょう」「革命ために社会主義文化課程をしっかりマスターしましょう」「全身全霊で人民に服務しましょう」「さあ団結して、さらに大きな勝利を勝ち取りましょう」
第4課の規律教育編には、「規律性を高めないと、革命は勝利できません」「規律こそ路線を正しく執行するための基盤なんです」「全ての行動は指揮に従い、全員が歩調を整えることによってこそ勝利を得られんですよ」「みんなお話を聞くのは好きですか。これから先生が解放軍のおじさんにお願いし、革命の規律をしっかりと守った物語をお話して戴きましょう」
第10課はその他編で、「勉強を主に他も学習しなければなりません。教室での勉強ばかりでなく、労働、農業、軍事を学習し、資本階級を批判しましょう」「李小平クンは放課後、人民公社の生産隊のお手伝いで野糞を拾い集めました。こういった行いは素晴らしいことなので、みんなは真似しましょう」「明日午後、生徒全員で人民公社に麦の収穫を手伝いに行きますが、2年生は第二生産大隊で落穂拾いを致します」「いいですか、体を鍛えて祖国を守るんですよ」「今日午後、学校で『国際歌(インターナショナル)』の練習を行いますから、予定通りに集まって歌の練習をしましょう」「皆さんは労働を通じて『一不怕苦、二不怕死(死にもの狂いでやりぬくぞ)』の気高い革命精神を身につけるのです」
あの時代、教師が教室で普通話学習を口実に児童生徒を盛んに唆していたからこそ、紅小兵という名のこまちゃっくれたガキ共が勝手気侭に暴れ回ったって、わけだ。 《QED》