【知道中国 366回】 十・三・仲八
――理想的で野心的な発展計画が成功していたら・・・
『全面規画 加強領導』(上海人民出版社編 上海人民出版社1974年)
この本では、文化大革命において農村の社会主義化が全国各地で如何に順調・確実に進展・深化したかが自画自賛気味に綴られている。まあ、いまになって振り返ってみれば、その大部分が例の如くに超上げ底のデタラメだったことは、いうまでもないことですが。
さて特筆すべき成功例として上海県嘉定県安亭公社新涇大隊の例が挙げられている。
同生産大隊が制定した「1974~1980年農業発展規画(修訂草案)」なる計画が、まことに意欲的で、野心的で、革新的で、革命的で、建設的で・・・慶賀に耐えない。ホントです。
冒頭に「遠大なる目標は、人の視点を目先の物事に捉われることなく一歩前に踏み出させる」との毛沢東の指摘を掲げた後、「我ら新涇大隊全体の幹部と社員(=農民)が人民公社における集団経済の基盤をより強固にし、迅速に農業生産を発展させ、社員の生活水準を確実に向上され、農村の社会主義陣地を強固にし、プロレタリア独裁の任務を社会の基層部分にまで定着させるため、この7ヵ年計画を定めた」とし、27項目の計画が詳細に綴ってある。そこで、概要だけでも見ておきたい。
1:毛主席の革命路線の指導の下で人民公社の集団経済の優越性を十分に発揮する。
2:1980年段階の食糧、棉、油の生産を、それぞれ73年の2倍、2倍、3倍にする。
3:養豚を軸に鶏、家鴨、魚を生産し、椎茸や葡萄の栽培を進め経営の多角化を目指す。
4:住居、集落の四囲、道路脇、河川沿いを緑化する“四傍緑化”を実現する。
5:農地の構造改良を進め、洪水、日照りなどの自然災害に影響されない田畑を作る。
6:丘陵地や山地を崩し平坦に均し田畑を拡張する。
7:自然肥料を増産し土壌改良を進める。「機動船隊を建設し、上海市街区から雑肥を運搬する」とあるが、“機動船隊ガンダム”を組織して上海に向かおうというわけではない。エンジン付の小船で上海から「雑肥」、つまり残飯や人糞を集めようというだけのこと。
8:種苗田を作り、良質の種苗を開発し、大隊を種苗生産基地とする。
9:病害虫駆除を徹底する。
10:科学種田センターを組織し試験田で科学的農業技術開発を進める。
11:全面的な機械化を進め農民の過労を防止し生産速度を速める。
12:農道を補修し、一般道を改良し、農村道路網の経済的・有機的な運用を進める。
13:現に経営している鏡生産、農機具修理、農産品生産に加え農機具部品生産などを進め、大隊の集団経済を多角化する。
14:生産拡大を基礎に、社員の増収を目指す。
以下、食糧備蓄の拡大、スーパー・マーケット式商店開設、住宅の改築と建設、中学校教育普及と文盲解消、疫病防止と害虫駆除、医療充実、婦女・幼児教育の整備、余暇の充実(“1大隊にテレビ1台”)、計画出産、貧農下層中農による自主的なマルクス主義理論学習、生産大隊の民兵連隊化、幹部の労働参加と続き、「計画執行情況を毎年春節前後に予定されている社員大会で検討・精査し、経験を総括し、工作を改め再度挑戦する」で終わる。
この計画が大過なく達成されていたら、今頃はステキでハッピーな農村が出現していたはずなのに・・・そうならなかったワケは、天知る地知るも君知らず、デス。 《QED》