【知道中国 364回】 十・三・仲三
――「党的一元化領導」とは、なんとも身勝手な屁リクツだった
『加強党的一元化領導』(上海人民出版社 1974年)
この本を書いたのは中共上海市紡織工業局委員会写作組と、じつに長ったらしい名前の組織だ。四人組の一員である汪洪文は上海の国綿17廠労組活動家から上海文革激派を経て北京への道を歩んだ。だから、この本は汪洪文が配下に書かせたものだろう。
表紙を繰ると最初の頁に『毛主席語録』から数句が引用されているが、その中の「労働者、農民、商人、学生、兵士、政府、党の7つの部門において、党こそが一切を領導する」が、この本の全てを象徴しているようだ。「党」が「労働者、農民、商人、学生、兵士、政府、党」の上に君臨し、有無を言わさずに一切を仕切ることが「党の一元的領導」なのだ。
全編これ激越な調子の難解な文章で貫かれているが、なんとか解読・概観してみたい。
先ず党の一元的領導が必要不可欠であるわけは、それこそがプロレタリア階級の革命を勝利に導く極めて重要なカギだからである、とする。かくて「なにが党の領導を利し、なにが逸脱・弱体化させるかを明確に弁別し、党の一元的領導を維持し強化するべく自覚性を不断に高め、共産党員が持つ先鋒模範という役割を十二分に体現し、党組織が具えるプロレタリアの先鋒隊としての核心的働きを発揮し・・・毛主席の革命路線に沿って、プロレタリア階級の革命を徹底的に進めよう!」と呼びかける。
以上の総論を踏まえ、以下に“各論”を個条書きで綴ってみると、
一:党の一元的領導は、党の各レベルで正確な思想と政治路線を徹底的に貫徹させることによって実現される。組織内では、横の関係では内ゲバをしてはならない。上下の関係では下部機関は上部機関に服従し、「全党は中央に服従しなければならない。
これが我が党の伝統であり、断固として維持されなければならない」
二:党の一元的領導を強化するためには、全体情況を注意深く把握しなければならない。「全体情況とは、つまり階級闘争であり、路線問題である」
三:党の一元的領導を強化するためには、党における民主集中制を断固として真剣に推し進めなければならない。それが党の一元的領導の強化にとっての組織的保証である。党の決定を実行し、党内各レベルで推進するという原則によって、党と他の組織との関係を正しく処理できる。集中指導に基づいた民主生活を励行することで、党内の上下関係を正しく処理できる。大衆路線を堅持してこそ、党の領導と大衆の関係を正しく処理できる。
四:毛沢東のいう「三要三不要(マルクス主義・団結・公明正大であるべき。修正主義・分裂・陰謀詭計は不要)」を党革命化への基準とし、「三大革命闘争(生産闘争、階級闘争、科学実験)」の実践を緊密に結びつけ、「断固として毛主席の革命路線を執行・防衛すべし」
要するに「党の一元的領導」とは党の一切が「中央」、つまり最高権力者=毛沢東に盲従することであり、「党における民主集中制」とは上意下達の徹底だ。だが使い古しのボロ雑巾のような「党の一元的領導」やら「党における民主集中制」を、この時期に、敢えて持ち出さざるをえなかったところに、四人組の権力基盤は見かけ上はともかくも、大いに揺らいでいたことが見て取れる。ともあれ、民主主義もへったくれもない。なんとも身勝手極まりないヘリクツで糊塗された「党の一元的領導」だが、それを実践励行しているのが民主党で中央に当たる小澤だ。いやはや、誠に以って恐れ入った親中派である。 《QED》