【知道中国 311回】 〇九・十一・念六
――なぜに、そんなに嫌われる。いや、嫌うのか
『来生不做中国人』(鐘祖康 允晨文化 2007年)
「生まれ変わって豚になったって断固として中国人なんかにはなりたくない」「朝から晩までのウソだらけ。人民を敵にするようなヤツは早くくたばれ」「中国文化はデタラメで塗り固めたもの」「中国を愛する理由なんて探してもゼッタイに見つかりはしない」「次の世代にいいたい。こんな国の国民なんかにはなるな」「来世では断固として中国人にはならない」「中国という国家は自国民を愛しいとは思わない」――表紙に並ぶ過激な惹句の数々だ。
この本が紹介する著者の横顔は――1960年代半ばに香港の伝統的な貧困農家に生まれる。毛沢東死後では初の民主化運動となった「北京の春」を主導した1人の魏京生逮捕から、中国の恐怖政治に深い関心を抱き中国観察をはじめる。時に14歳。中文大学卒業後に仕事に就くが、香港の教師や公務員などが政府から与えられる高い給料に篭絡され社会の不正義に沈黙していることに慄然とする。90年には第1次陳水扁政権誕生に沸く台湾を訪れ民主政治の熱気に接して後、香港でも民主化運動に参加する。だが、「中国奴才文化(奴隷文化)」に犯された中国人は民主政治とは程遠い存在だと気づき、その原因を探ろうと思い立つ。01年以来、香港で最も過激に台湾独立を叫ぶ「香港華人」の第1号に。かくて北京から「台湾島内の台独分子以上に傲慢、デタラメ、無恥」との“勲章”を授かる。03年にノルウェー籍夫人と共にノルウェーに移住。以来、同国政府の中国政策に助言を与える一方、全ての面で「夷人」が中国人より優れている要因を根源的に問い糾す作業を続ける。
そこで、「傲慢、デタラメ、無恥」な著者の中国奴才文化告発の一端を・・・、 「(中学の教師は)中国は『礼儀之邦』であり『四大発明』を持っている。あの王朝は東を征伐し、この王朝は西を平定し版図を広げた。だから君たちは中国人であることを誇れというだけで、私にとっては気がかりな魏京生については口を閉ざす。
「中国民衆の大部分は大陸の真実を知らない。『五千年の文明大国』が聞いて呆れる。
「(独裁政権が統治する「市場経済」が導く)奇形としかいいようのない中国の勃興はグローバルな文明にとっては災難以外のなにものでもない。
「(中国製品にふくまれる環境汚染物質が)生態系を破壊し欧米における使用者の体内に蓄積される一方、確実に児童の知力の発展を妨げ、人々の体質を劣化させ、世界中の先進文明に『中国化』をもたらす。これこそが、もっとも恐怖すべき黄禍というものだ。
「(独裁政治強化の経済発展によって)十億の奴隷の血と汗が全世界を撹乱する。
いずれも雑誌に発表された文章だが、「悠久な歴史は不幸だ」「反省しない民族は偉大な民族にはゼッタイになれない」「道徳を宗教に置き換えてしまったことが、中国の大きな錯誤だ」「命理を論ずるほどに、中国は衰亡する」「中国人は僅かな土地にも緑を留めない」「奇技淫巧から科学技術立国への転換を」「他民族蔑視こそが他民族からの侮蔑を招く」――確かに過激な主張ではあるが、正しいとしかいいようはない。北京が怒り狂うわけダヨ。
「EUの成立は欧州の文明水準を高め、中国の崛起は逆に地球の文明水準を引き下げる。これが最大の違いだ。これまで憂慮し続けた『黄禍』は、確実に生まれてしまった」と最後の一節を読み本を閉じた。中国史、共産党政権、中国人などへの理路整然と小気味いい悪罵にスカッとするが腑に落ちない。嫌よ嫌よも好きのうか・・・
ウーン。沈思黙考。 《QED》