【知道中国 294回】                   〇九・十・仲七

―内政すら全球化(グローバル化)させようというのか

中国和平統一促進会(China Council for the Promotion Peaceful National Reunification=CCPPR)が鄧小平の呼びかけで組織されたのは1988年のこと。中台両岸関係を北京ペースで発展させ、88年1月に就任した李登輝総統(在位は2000年5月まで)の強烈な個性と指導力によって独立志向を示しはじめた台湾を“搦め手”で封じ込めようとしたわけだ。

 全国人民代表大会、全国政治協商会議、全国総会、共産主義青年団中央、中国科学院、社会科学院、全国台聯、欧美同会、黄埔軍校同学会、台湾同学会に加え共産党の翼賛組織である中国国民党革命委員会、中国民主同盟、中国民主建国会、中国民主促進会などの民主諸党派によって組織された中国和平統一促進会は、「中国統一に賛成する各界人士が自主的に組織した独立法人の地位を持つ全国的な、非営利社会組織」ということになっていて、「両岸の民間交流を促進し、『台湾独立』『二つの中国』『一中一台』など中国分裂活動に反対し、中国の和平統一を目指す」ことを掲げている。

 現在の会長は党内序列4位で江沢民前主席の“懐刀”で知られる賈慶林全国政治協商会議主席。一方、運営を実質的に取り仕切るのは賈慶林の下で全国政治協商会議副主席を、加えて中国和平統一促進会で副会長を務める杜青林・中央統戦部長。だから、どう考えても(いや考えなくても)「独立法人の地位を持つ全国的な、非営利社会組織」とはいい難い。

 中国各地、台湾、香港、マカオに同会支部は組織されているが、じつは海外に目をやるとカンボジア、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、韓国、日本のアジア各国だけでなく、ベルギー、チェコ、フィンランド、ドイツ、アイルランド、ルクセンブルグ、ノルウェー、ポルトガル、ルーマニア、サルビア、スペイン、スペイン・バルセロナ、イギリス、オーストリア、クロアチア、デンマーク、フランス、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポーランド、ルーマニア、ロシア、スロバキア、スエーデン、ウクライナ(以上、ヨーロッパ)、ロスアンゼルス、ニューヨーク、ヒューストン、シカゴ、南カリフォルニア、ペンシルバニア(以上、アメリカ)、エドモント、カルガリー、モントリオール(以上、カナダ)、ボリビア、ブラジル、パナマ、メキシコ、ペルー、アルゼンチン、チリ、コロンビア、トリニダートトバコ、ガイアナ(以上、南米)、ボツワナ、ガボン、マラウィー、モーリシャス、ナミビア、ウガンダ、ジンバブエ、ケニア、マダガスカル、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、ザンビア(以上、アフリカ)、オーストラリア、フィジー、トンガ、バヌアツ、シドニー、ニュージーランド(以上、大洋州)の各国や地域にも支部を置く。以上は主だった支部であり、国や地域によってはさらに細分化されているだけではなく、「澳洲維省越棉寮華人中国和平統一促進会」のように、越(ヴェトナム)・棉(カンボジア)・寮(ラオス)のインドシナ3国からオーストラリアのビクトリア州に移った華人の組織すらある――まさに壮観(?)。彼ら漢族の常套句で表現するなら「四海為家(せかいは我が家)」。これこそ、もう1つの中国の全球化(グローバル化)というものだろう。

 いまや彼等は世界に溢れ、各地で一斉、かつ“自主的”に「台独(台湾独立)」、「蔵独(チベット独立)」「疆独(ウイグル独立)」に反対の声を挙げはじめた。ということは内政も全球化させ、世界中を引っ掻き回そうというのか。身勝手が過ぎるというものだ。  《QED》