――番外:『亞洲週刊』の伝える日本(10)――
『亞洲週刊』(2025/11/3-11/9=第44期39巻)に4本、(2025/11/10-11/16=第45期39巻)に2本の日本を主題とした記事・論説が掲載されている。以下、掲載順に見ておく。
■「高市迎特朗普再続安倍縁(高市、トランプを迎え、安倍との縁を再び続ける)」=安倍晋三の政治的後継者と讃えられる高市首相は、就任1週間ならずしてトランプ米大統領を迎え、早々と外交的試練に立ち向かう。「トランプと安倍の縁」を存分に利用し、トランプとの間で首脳間の信頼関係構築を目指した。トランプの滞在中、日米の財務・商務・外務・国防担当の大臣が会談を重ねるなど、石破前政権時の日米関係には見られなかった光景であり、日米関係は安倍の縁に基づいて新たな一歩を踏み出した。
■「保釣80週年香港座談會 紀念抗戦勝利台湾光復(釣魚島防衛運動80週年座談会、抗日戦争と台湾光復を紀念して)」=10月25日、香港で中台両岸の釣魚島防衛運動関係者・団体が集まり、抗日戦争勝利と台湾の光復(日本の統治を脱し、“故国”に復帰)、それに釣魚島の法理論的中国回帰の80週年を紀念し集会を開き、中国の完全統一実現と中華民族のさらに明るい未来を切り拓くことを誓った。
■「《鏡:KAGAMI》永恒独奏会 展現坂本龍一生命最後楽章(《鏡:KAGAMI》魂の独奏会、坂本龍一、命の最終楽章が立ち現れる)」=2020年12月に48台のカメラで捉えた《鏡:KAGAMI》を演奏する坂本の姿に、来年2月の香港芸術節でMR(複合現実)によって息を吹き込まれ動き出す。「教授」坂本と聴衆による夢幻の空間が立ち現れるはずだ。
■「王眾一与《人民中国》対日宣伝(王眾一と『人民中国』による対日宣伝工作)」=中国の数ある対外宣伝媒体の中で、日本向け『人民中国』は周恩来・廖承志・郭沫若など共産党初期からの対日工作重鎮に重要視されていた。政治宣伝臭に偏らず両国の文化交流を全面に打ち出した編集が奏功し、商業的に成功した。小泉・福田・麻生・鳩山・菅・野田・安倍などの歴代首相も自費の定期購読者であった。1963年瀋陽生まれの日本語の使い手であり、同時に日本映画の優れた批評家である王眾一こそ、『人民中国』の功労者だ。
■「高市早苗双面外交風暴 会台湾代表中方抗議(高市早苗、両面から外交圧力。台湾代表との会見に中国が抗議)」=10月31日、高市はAPEC参加を機に習近平との初の首脳会談に臨み、「戦略的互恵関係」を強く打ち出した。だが翌日にはAPEC台湾代表と「高調(興奮気味)」に対談している。これには中国外交部が強く抗議した。日中国防相対話も始まったが、高市政権は日米同盟強化を打ち出す。トランプ政権が日本の武器輸出を認める方向だが、高市政権の外交姿勢は地域の安全を脅かし、緊張を高める。
■「特朗普亜洲行隠蔵的藍図(トランプのアジア旅行の隠された意図)」=今回のアジア旅行で、トランプ米大統領は中・日・韓などアジアの多くの指導者と会談を重ねた。高市とは安倍提唱の「自由で開かれたインド太平洋」構想推進を打ち出一方、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認した。日本の野党陣営は日本の独立自主を強調し、高市の度を越した「媚米」姿勢を強く批判する。
韓国でのトランプと習近平の米中首脳会談は「友好的雰囲気の中で行なわれ、ある種の妥協がなされた」。10月の北京での四中全会が打ち出す五カ年計画(2026~30年)が順調に達成された暁には、世界経済に対する中国の影響力はさらに強まる。今回のトランプのアジア旅行に秘められたアメリカとアジア諸国が描く未来図の限界が仄見えるようだ。
――『亞』の指摘を悪い冗談と退けたにせよ、今国会における相変わらず現実離れした醜悪陳腐な“論戦”をみせつけられるほどに慄然とせざるをえない。なぜなら、現在の日本では国政に携わる選良の日々の振る舞いが社稷に対する日本人の信頼を殺ぐ方向にしか働いていないばかりか、選良にその自覚の欠片すら感じられないからである。《QED》