――番外:『亞洲週刊』の伝える日本(9)――
『亞洲週刊』(2025/10/27-11/2=第43期39巻)は、掲載順に「高市極右夢幻組合面対危機」「日本政治的沉淪与新生」「高市化険為夷拝相幕後」「村山富市去世弦楽断音猶存」の4本の日本関係の記事・論説を収めている。共に1頁大。
■「高市極右夢幻組合面対危機(高市の極右幻想による連立は危機に向かう)」=「右派政客(右派政治家)」の高市が自民党総裁に就任するや、巨大な宗教団体の創価学会を母体とする公明党が連立から離脱した。同党は中道・良識の立場から自民党主体の政権基盤の安定に寄与する一方、中道・良識の立場から、ともすれば右傾化に進みがちな自民党政治をチェックしてきた。
公明党を失ったことで少数与党必至の高市自民党は、形振り構わずに多数派工作を推し進めた。一時は立憲民主、国民民主、日本維新の会の3野党による連携の動きもみられたが、「カラ元気だが肝っ玉が小さく、優柔不断な玉木らによって絶好の機は失われた」。この間隙を縫って、自民党は党勢弱体化必至状況にあった日本維新の会と手を組んだ。
「極右勢力野合に拠る国家主義集団が政権中枢に盤踞」する高市政権が始動するが、日本周辺の米・中・露の三大国が恐れる「過去を反省し、人権を重視する民主的日本」に逆行することだろう。「石破の退陣は自民党の分裂・瓦解を加速させる可能性は大」である。
■「日本政治的沉淪与新生(日本政治の沈淪と新生)」=10月21日の「石破内閣総辞職」を機に、「日本政治は折り返し点を曲がり、支離滅裂・混乱の方向に踏み出した」。創価学会を基盤に「平和・対話・中道」を掲げていた公明党との連立は、「日本政治の長期に亘る安定と政策的一貫性を保障してきた。この連立システムが崩壊したことで「日本政界の右傾化は一層進み、“柔よく剛を制す”といった政治合気道の維持は困難」となった。
「日本の政治は、さらに複雑化・多元化・混乱化・競争化の時代に突き進むことになるだろう」。であればこそ「日本は混乱の渦中でも中心をシッカリと守り、政治を向上させる力量を見定め、新生に邁進することを学ばなければならないのではないか」
■「高市化険為夷拝相幕後(高市、起死回生の舞台裏)」=「日本の政界では驚天動地の政治バクチが演じられ」、10月21日に行なわれた首班指名選挙で「政治の大難局が打ち破られた」。かくて104代目の、そして日本最初の女性宰相の誕生となった。
自民党と日本維新の会は「憲法改正、外交安全、エネルギー政策などの核心分野で双方の立場は重なり合い」、共に「憲法第9条を改正し自衛隊の権限を強化することを支持し、日米軍事協力の深化とエネルギー政策における原発推進を主張している」のである。
一方は維新の会の力を借りることで政権党の立場の維持を、一方は年来の主張である「副首都構想」の現実化と地方政党から全国政党への飛躍を目指す。だが、過半数をわずかに上回っただけの議席数では政策実現のハードルが高く、消費税減税や政治献金問題は連立破局の導火線となりうる。
組閣に当たって高市首相は小泉を防衛相に、茂木を外相に充てたが、「中日関係」が悪化に向かうリスクを避けようとしたのであろう。
■「村山富市去世弦楽断音猶存(村山富市逝去、命は消えるも余韻は消えず)」=10月17日、「白い眉のジイサン」と親しまれていた村山元首相は、故郷の大分県で101歳の生涯を閉じた。漁師の家庭に生まれ、幾度かの戦争を乗り越え、社会主義を信奉する村山は、首相在任時の1995年に「日本帝国主義の侵略と植民地支配を謝罪した」。この「村山談話」こそ「歴史の経典」である。真摯な村山が示した心からの哀惜の念は消えない。
――どうやら高市政権の誕生は、『亞』にとっても余り好ましい現象ではないらしい。日中関係悪化のリスク対策が小泉防衛相と茂木外相とは・・・ハテ?《QED》