――番外:『亞洲週刊』の伝える日本(7)――
『亞洲週刊』(2025/10/13-10/19=第41期39巻)の表紙を飾るのは、日の丸を背にした紺のスーツ姿の高市新首相の上半身。その左側に「日本首位女首相衝撃 高市早苗反華親美反女権玄機(日本初の女性首相の衝撃、高市早苗、反中親米反女権の巧智」と大きな活字で、高市首相の政治信条・姿勢を記し、9頁を使い、彼女の自民党総裁選勝利から首相就任への背景を詳細に報じている。
――かつてTV番組のキャスターを務め、若い頃はバイクをブッ飛ばし、ドラムを叩きロックに興じた高市が自民党の新総裁となり、日本史上初の女性首相に。彼女は反中親米で女性の権利・夫婦別姓・同性婚に反対する一方、靖国神社に参拝し、南京大虐殺を否定する。まさに男女の違いを超えて男社会を生き抜いてきた「日本強硬保守派政治家」だ。
10月末に韓国で行なわれるAPEC(アジア太平洋経済協力)会議でトランプや習近平と顔を合わせるだろうか。目下の日本政界に横溢する右派ポピュリズムの流れに乗った彼女の「日本ファースト」は、はたして「アメリカン・ファースト」と衝突しないだろうか。
男勝りの強い性格の「鉄娘子(鉄の女)」である彼女の政治信条、それに安倍元首相に師事したことなどから「女安倍」とも形容されるが、安倍に備わっていた政治家の家系を背景にした政治家としての資質と高い政治手腕――政治目的達成のための柔軟性と高度な戦略性――を、直ちに彼女に求めることには、やはりムリがあろう。
日本の政権の歴史を振り返るなら、「親米の政治家だけが安定的政権運営を可能にした。長期政権だった中曽根康弘、小泉純一郎、安倍晋三が、それを物語っている。この系譜に例外はない」。この例に照らすなら、石破政権がトランプ政権との間で約束した屈辱的な経済案件――日本からの大型投資の利益の大部分をアメリカが受け取る――を、「鉄娘子」がどのように処理するのか。個人的関係も含めたトランプとの交渉の行方に、高市政権の命運、つまり日本の将来が掛かっている。
はたして彼女は安倍のようにトランプと個人的関係を築けるだろうか。直情径行気味で自己肯定感の強い高市の作風から判断して、どうやら「女安倍」とはほど遠いようだ。
日本の政界における極め付きの親台嫌中強硬派である彼女は訪台を重ね、日台経済連携協定(EPA)締結を強硬に主張している。総裁選出馬会見でも「台湾有事は日本有事」を主張したが、「台湾問題は北京のデッドラインを強く刺激する」ことも、また確かである。
「鉄娘子」は、①党内基盤が弱く、麻生派に頼らざるを得ない。②政権の安定基盤を構築するため、離脱した公明党に代ってどの野党と連立を組むのか。③低迷経済、インフレにどのように対応し、経済成長と国民生活の好循環をどのように構築するのか――という解決を急がれる大きな問題を抱えている。
彼女の総裁就任に伴い株式市場が一気に活況を呈するなど、経済界は新政権誕生を歓迎する。総裁就任に際し「働いて、働いて、働き尽くす」と決意を披瀝するような「工作狂」でもある――
「まだ首相に就任してはいなが」と断ってはいるが、敢えて「日本首位女首相」と表現しているところからして、『亞』は彼女の首相就任は現在の日本における政治状況下では「既定の事実」と捉えている。
オールドであれSNSであれ、日本のメディアが連日垂れ流す揣摩憶測と視野狭窄気味の願望に満ち溢れる一方、一種のエンタメ、あるいは個人的不満のはけ口のような“客観報道”に較べ、小泉進次郎に対する「中看不中用(見てくればかり)」との辛辣(的確?)な評価に現われているように、率直な報道姿勢は侮り難い。最後に一言。安倍元首相に対する過剰に政治的な批判がみられない点に大いに注目しておきたい。《QED》