【知道中国 2887回】                      二五・九・初五

  ――番外:『亞洲週刊』の伝える日本(5)――

『亞洲週刊』(2025/9/1-9/7=第35期39巻)の日本関連は「横浜非洲峰会倡印非経済圏」と「石破寧清党能救自民党?」の2編で、これに直接日本に言及しているわけではないが韓国の李在明大統領の日米両国訪問に関連した「李在明先訪日再訪美国 尊重朝鮮体制不強求南北統一」が加わる。

■「横浜非洲峰会倡印非経済圏(横浜でのアフリカ・サミット インド・アフリカ経済圏を提唱)」:横浜で8月20日から22日まで、33人の国家元首を含む49のアフリカ国家代表を集めた第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)が開催された。

安倍元首相が過去の同会議で提唱した安全保障を柱とした「インド太平洋戦略」を受け、アフリカと周辺諸国との連携を強化し、稀少地下資源の安定的供給保障と開発推進を掲げ、石破首相は「インド・アフリカ経済圏戦略」を初めて提唱し、アフリカで日々拡大する中国の影響力への対抗軸を打ち出した。

日本提唱の「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、経済安保の観点から重要資源サプライチェーン多元化を目指し、インド洋と中東とアフリカを結ぶ経済回廊の一体化を目指し、アフリカとの経済貿易での連携強化と投資の強化・拡大を狙う。石破首相は「日本はアフリカとアフリカ以外の地域とを結ぶ確実な架け橋とならんことを希望する」と語った。

■「石破寧清党能救自民党?(石破の党改革は自民党を救うことができるのでは?)」:NHK、時事通信、朝日新聞による世論調査の最新結果によれば、石破支持率は高くはないが微増傾向にあり、不支持が支持を上回るとはいうものの、右肩下がり傾向にある。

その背景を各種世論調査から、次の2点が考えられる。①従来からの岩盤支持層の自民党離れ。②自民党内で繰り広げられている「石破おろし」をめぐるドロ沼の政争(「陰謀」と「陽謀」)にウンザリした有権者が、石破に「同情」を示すようになった。

昨年の総裁就任以来、石破は自民党の「伝統的保守の価値観」の再建に注力する一方、「安倍色を薄め、安倍的価値観の一掃」を推し進める。その結果、2度の国政選挙を経て安倍派(清和会)系の少なからざる議員が議席を失い、党の中核から外された。安倍支持層は参政党などの「民粋邪教党(ポピュリズム邪教党)」の周辺に結集することなった。少数与党の現状をどのように打破するのか。「清党(党改革)」に向けた「馬基維利主義者(マキャベリスト)石破」の次の一手を注視しておく。

■「李在明先訪日再訪美国 尊重朝鮮体制不強求南北統一(李在明、訪日後の訪米。朝鮮の現状を尊重し、強いて南北統一を求めず)」:前例を破り、大統領就任後、李在明は先ず東京を訪問した。前政権の対日姿勢を「屈辱外交」と批判し、日本の「核汚染水放出」に絶食抗議までしていたにも拘わらず、石破との間で事前の予測を遙かに超えた友好関係を築き、両国関係を好転させた。

その後訪問したワシントンでは、トランプを「世界平和の担い手」と煽て上げ、「朝鮮半島の平和を切り拓いてもらいたい」「朝鮮にトランプ・ビルを建設したい」とまで口にし、トランプの歓心を引き出し、トランプが求めた軍事費増強、関税、内政に対する圧力をユーモアで切り返した。

今回の外遊は予想外の成果を挙げたともいえるが、李政権の前途には国内民意の圧力、日本による歴史問題に関する逆襲、対米関係における韓国の国益維持などの難問が待ち構えている。いま地域情勢は微妙な安定状況の中で静かに推移している。

――TICADと韓国大統領の動向はさて措き、「民粋邪教党」の台頭と自民党の混乱で開店休業状態で空転する日本政治の現状を伝えるキーワードが気になる。それにしても「馬基維利主義者石破」による「清党」といった報道姿勢には、やはり要注意だ。《QED》