――番外:『亞洲週刊』の伝える日本(4)――
『亞洲週刊』は2週連続(2025/8/18-8/24~8/25-8/31)で表紙に「抗戦勝利80週年」と記し、抗日戦争関連の特集を組む。返還前から在香港中国資本の中核である華潤公司傘下企業、1997年の香港返還祝賀目的で香港を代表する企業家15人ほどで組織された香港明天更好基金など14の団体や企業がそれぞれ「慶祝抗日戦争勝利80週年」と銘打った1頁大の広告が掲載する。以下、抗日関係の論題と内容を簡単に見ておくと、
●「抗戦に現われた中華民族の生き様」:抗戦は国家の統一と和平への願望を反映した。
●「日本とドイツの第二次大戦に対する認識を比較」:日本は天皇を廃絶せず、教科書で南京大虐殺の記載を削除するなど、戦争の罪に対する認識はドイツに較べ不徹底に過ぎる。
●「中国遠征軍孫立人とスティルウエルの伝奇、中米奇縁」:雲南・ビルマ北部戦線で日本軍を撃退した米軍スティルウエル大将と中国遠征軍孫立人の交流と功績は大いに讃えられる。彼らの緊密な協力こそが「現在の中米友好関係発展の基礎であり」、「抗戦精神の遺産こそ中米合作の更なる縁につながる」
●「日本軍、孫立人を中国の軍神と讃える」:自衛隊戦史室出版『ビルマ作戦図』や村山磐『戦争と歩兵第四聯隊』に拠れば、日本軍にとって孫立人は大きな「脅威」だった。「孫麾下の中国遠征軍の米式近代装備は日本軍のそれを遙かに凌駕していた」
●「中国抗戦勝利の輝き」:抗日戦争当時の記録カラー写真18枚。
●「芥川賞作家堀田善衛日記、日本戦敗時の上海の現実」:堀田善衛は上海滞在中(1944年3月~46年年末)に目にした敗戦時の上海の姿、日中両国民の悲喜交々、汪精衛政権崩壊から国共双方による激越な宣伝戦、日僑(在留邦人)の複雑な心境と激変する時代を日記に綴った。「大陸経験が、その後の彼の創作に深刻な影を落としている」
●「ひっくり返された歴史は元に戻されなければならない」:米歴史学者Herbert Bixは日本側の多くの一次資料に基づき、天皇が「侵華戦争と太平洋戦争の決定と遂行に大きく関与していたことを解明し」、「軍部の傀儡に過ぎなかったとの日米教科書」を否定した。
●「石破茂の『敗戦』、賴清徳の『終戦』」:日本投降80年の節目に日本の石破首相が「敗戦」を口にしているのに、台湾の賴総統は「終戦」と語る。「歴史を愚弄するものだ」
●「石破、戦争を反省し、敗戦の教訓を汲み取る」:敗戦80週年に当たって石破首相は「日本は歴史の教訓を反省し、断固として戦争発動の道を再び歩むことはしない」と演説した。「ここ10年来、第二次大戦に関し『反省』を述べた最初の首相である」
●「南洋華人、抗戦血涙史、忘れられた悲劇の英雄」:戦前のシンガポール華僑社会指導者の陳嘉庚に率いられた「南僑機工(東南アジア各地の華僑義勇隊)」は、南方からの物資輸送などを通して抗日戦争に計り知れない貢献をした。日本軍の攻撃を受け多大な犠牲を払いながらも敢然と立ち上がり憤然と戦った彼らの「血涙史」を忘れるべきではない。
●「シンガポールとマレー華人、日本による虐殺犠牲者数万。李光耀、あわや銃下の犠牲に」:中国における抗戦支援を理由に、シンガポールとマレー半島では少なくとも5万人の華僑が殺されたが、李光耀は寸前で危機を逃れている。今年8月16日、南僑機工とシンガポールでの大虐殺を恨み、クアラルンプールの広東人共同墓地で2500人の観客を集め抗日をテーマの詩劇が公演された。
●「陳嘉庚、自動車工を抗日のために組織化。中国発展のために献策」:陳嘉庚の抗日戦争と共産党政権成立後の貢献を讃える。
――『亞』は抗戦への華人の「貢献」を讃え中国の「勝利」を祝う一方で、日本の「非」を論う。彼らの日本に対する姿勢が歴史=政治を打ち出す共産党政権と同質であることを、日本人は「戦後80年」を機に改めて深刻に考えるべきだと強く思う。《QED》