【知道中国 2869回】                      二五・八・初二

  ――番外:今次参院選を華字メディアはどう報じたか――

「日本参院選、華裔2勝1敗/自公連立惨敗、新保守勢力大躍進」との見出しを掲げ、香港発行の中文週刊誌『亞洲週刊』(2026/7/28-8/3)は見開き2頁で今次参院選を報じた。

――今次参院選の結果、自公連立の与党は参議院の過半数獲得に失敗し、少数与党に転落した。新たに登場した保守勢力の「参政党」が異常なまでに勢力を強化させた。「三名日籍華裔」の選挙結果を見ると、第二世代の華裔である蓮舫と北京大学卒の「新移民」である石平は当選したが、瀋陽出身の行政書士・吉永藍は落選した。「右翼勢力の崛起」が政界の新傾向となった――

これが同記事の概要である。中文活字メディアだから当然と言えば当然だが、「三名日籍華裔」の背景を詳細に伝えている。以下は、その概要だ。

――蓮舫は57歳で父親は台湾人で母親が日本人。謝蓮舫で日本名は村田蓮舫。議員歴・政治経験が豊富であるうえに野党第一党・立憲民主党の野田党首の「親信(側近、お気に入り)」で、党首の全幅の信頼を背景に同党公認の比例名簿第一位。当選は約束されていたようなもので、開票と同時に当確が打たれた。「得意分野の行政・金融改革に取り組む一方、多様性社会と選択的夫婦別姓制度の実現に取り組みたい」と抱負を語っている。

石平と吉永藍は共に「今次参院選の最注目候補。『日籍華裔』の第一世代に属する『黒馬(ダークホース)』」。中国大陸が対外開放された後に日本留学し、日本に帰化した。 

石平は「八九事件(文末参照)」の後に中国に対する「精神的訣別宣言」を公表して後、メディアで活躍し日本語で200冊を超える著書(共著を含む)を発表しているが、「その大部分は中国問題に関連し、反中国大陸親台湾の立場に立つ『華裔の第一人者』」である。

2月に日本維新の会からの出馬を宣言したが、多くの誹謗が寄せられたことから出馬断念を表明。その後、「誹謗に屈するワケにはいかない」「日本を中国の脅威から守る」決意を固め出馬。選挙期間中は憲法改正・国防力強化・対中政策再考・外国人帰化審査厳格化・大量移民防止・反スパイ法制定などを訴え、比例区でギリギリ当選を果たした。

吉永藍は瀋陽のインテリ家庭出身。日本留学後に日本人と結婚し、2003年に行政書士試験に合格し日本に帰化。在日外国人が関わる問題を扱う仕事で得た経験と知識を引っ提げて政治の世界へ。今年6月の東京都議選では敗退。日中両国のネット民や「日本右翼国粋主義的排外主義」からの誹謗中傷を浴びながらも、今次参院選に無所属で東京地方区から出馬し落選。だが、「15300票余の支持票という収穫があった」

参政党はトランプ米大統領に倣って「日本第一」「日本優先」を掲げ、「右翼民族主義の風潮」を巻き起こし、「排外主義の感情を煽り、日本保守の狭隘な民族主義の回帰現象を刺激した」。同党の今後は、日本の政治動向の指標として注視しておきたい――

同誌創刊は1987年。1990年代半ばにマレーシアの親中系華人企業家に買収されて以降、天安門事件を敢えて「八九事件」と表記するように、中国に対する批判的論調は影を潜める。だが、時に寸鉄人を刺すような中国批判記事もみられる。

当初販売範囲は限られていたが、現在では香港、マカオ、中国、台湾に加え、ミャンマーを除くASEAN全域、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどで、主に新聞スタンドやキオスクなどで販売されている。ここから華僑・華人社会は時代が下るに従って世界各地に広がり、彼らは同誌が伝える情報から世界の動きを捉えようしているということが判るだろう。

彼らの視点に立ち彼らの目に映る世界を眺め直す。こう思い立ち、創刊数年後から飽きもせずにセッセと定期購読を続けてきた。というわけで、これからも同誌による「日籍華裔」の報道振りを注視したい。それも「知道中国」につながると考えるわけだ。《QED》