【知道中国 2748回】                      二四・十・初一

  ―― 習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習414)

ここで過去を振り返りながら、改めて日中関係の将来を考えてみると、「完全毛沢東世代」とでも呼ぶべき世代の政権が続くと思われる2030年代半ばまでには、“衝撃的な百周年”が目白押しであることに気づくはずだ。

今から7年後の2031年は満洲事変から100年後、その翌年に当たる2032年は上海事変と満洲国建国から100年後、それから5年が過ぎる2037年は盧溝橋事件と通州事件から100年後、2045年は「抗日戦争勝利」から100年後で、2049年は「建国百周年」となる。

だから日本は2031年、32、37、45年を迎えるに当たり、万全の外交体制を粛々と築いておくべきだ。もっとも共産党政権が非を受け入れ「反日・仇日」の教育を全面廃止し、あるいは「子々孫々までの親日姿勢」を打ち出すような“奇跡”でも起きれば話は別だが。

やはり共産党政権は、国民を煽って「反日」キャンペーンを強力に仕向け続けるに違いない。かくも費用対効果の高い外交的武器を、彼らが万に一つも手放すことはないだろう。

思い起こせば、「習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍」と題し、香港留学時にひたすら買い集めた文革関連書籍を読み始めたのが2022年3月2日。以来、2年半ほどの時間を閲し、全414回に亘って拙稿を書き繋いできたが、共産党政権欽定の歷史観と中国語が共産党の権力基盤を強固に下支えし、習近平世代とその次の世代の思考回路の大きなウエートを占めているのが「反日・仇日」というイデオロギーであることがハッキリと姿を現わしてきたと思える。

もちろん、そのイデオロギーを支えているのが欽定中国語であるゆえに、習近平政権は西側からの「文化的ジェノサイド」の激しい批判に耳を傾けることなく、少数民族に対する中国語教育を今後とも強力に推し進めるに違いない。

であればこそ、大多数の中国人の頭には共産党政権指導部以外の目では捉えることのできない「反日・仇日愛国主義」の金箍児がガッチリと嵌められていることを、常日頃から深く心得ておく必要がある。

言い換えるなら習近平政権が盛んに仕掛ける「反日・仇日愛国主義」は、内外のメディアが競って報ずる不動産バブルを原因とする経済政策の失敗、強権化や人権無視の極度の行動制限などに起因する国民的不満を他に逸らすため、といった類の短兵急な要因によってもたらされたものではない。より根源的に考えるなら、共産党政権の存立そのものに深く根ざしていると考えるべきだろう。

これから後、どのような状況が起ころうとも、やはり共産党が中華人民共和国を強固・冷徹で一元的に統御する独裁政党であり続けているという厳然たる事実は、常に肝に銘じておきたいものである。

共産党を名乗りながら毛沢東以来の党の歩みを完全否定するような新たな指導者の登場を近い将来に期待することは、余りにも非現実的に過ぎるだろう。ましてや全土の隅々にまで巧妙・厳格に張り巡らせた統治・監視装置を持つ同党の権力基盤を内側から食い破り、切り崩し、西側の希望に添うような形で国際社会との協調・和諧を目指す安定した“民主的政治勢力”が出現する可能性は、目下のところは限りなくゼロに近い。

であればこそ中国を取り巻いて揺れ動く現実を捉えるためにも、共産党政権欽定の歷史観と中国語に関しては、今後とも関心を持ち続けなければならないことは当然だ。とはいえ香港時代に入手した数多の文革関連書籍もほぼ読み終えたことでもあり、この辺りで軌道を転じ、海外に居住する華僑・華人の社会を“もう一つの中国”と捉え、極めて個人的で些細な日常体験を振り返りながら考え直してみたい。それもまた「知道中国」、いわば広く「中国」を「知道(しる)」ための一環ではなかろうか。《QED》