【知道中国 2700回】                      二四・六・初七

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習366)

試みに冒頭に掲げられた「いくつかの例から、なぜ邏輯(ロジック)、語法(文法)、修辞を学ばねばならないか」と題された文章に目を通してみて気になったのが、以下の主張であった。

「いうまでもなく邏輯、語法、修辞に関する問題は、思想内容と密接な関係にある。だから、この種の知識を的確に把握することは著作のためだけではなく、文章を推敲するためでもある。文章を読む場合、こういった知識で文意を分析すれば、思想内容はより明確に理解できる。もちろん反面教材を目にした時には誤りを見つけ、敵が弄ぼうとする詭弁を明らかにすることも可能になるわけだ。

修正主義者は自分たちの黒貨(怪しげな品物)を売りつけようとし、とどのつまりは文字や言葉を粉飾して騙そうとする。時に悪意を包み隠し婉曲に語り掛け、時に耳に心地良い言葉を巧みに並べながらウソをマコトと言い逃れようとする。ヤツラの真の狙いを見定めるためには、マルクス・レーニン主義と毛沢東思想の顕微鏡と望遠鏡に拠るべきである。ヤツラの変幻自在のワザを見破るには、やはり邏輯、語法、修辞に関する知識を動員しなければならないのである」

どうやら「修正主義者」の詭弁を見破るためには「邏輯、語法、修辞を学ばねばならない」。つまり時に口角泡を飛ばし、時に諄々と、時に居丈高に、時に一方的に自らの主張をまくし立てるヤツラの言い分を、「マルクス・レーニン主義と毛沢東思想の顕微鏡と望遠鏡」を使って見定め、真偽を見破り、「邏輯、語法、修辞に関する知識を動員」して、そのウソを白日の下に暴き出そう。これこそが『邏輯語法修辞漫談』の狙いらしい。

そのために53を数える実例を挙げて「邏輯、語法、修辞に関する知識」を微に入り細を穿って解説している。試みに、53例のうちの22番目に置かれた「二十二 『フルシチョフより、よりフルシチョフだ』から名詞と副詞を語る」を見ておくと、

――「ソ連修正主義叛徒集団の頭目であるブレジネフはフルシチョフより、よりフルシチョフだ」と表現するが、フルシチョフは「誰でも知っているように、ソ連共産党内に20年以上にわたって隠れていたブルジョワ階級の野心家であり陰謀家だった。スターリン死後に反革命クーデターを敢行してソ連の党・政・軍の大権を騙し取り、ソ連という国のかたちを変えてしまった。

次いで政権を掌握したブレジネフは「フルシチョフの衣鉢を継承し、国内ではファッショ独裁を行い、国際的には居丈高に覇権を唱える。その野心は狂ったように止まるところを知らず、陰謀の害毒はフルシチョフの比ではない」。そこで短いながらも「よりフルシチョフだ」とのフレーズによって「より陰険で、より狡猾で、より反動的として振る舞う様子が生き生きと捉えられ、全体状況を的確に表現することがかのうとなる」――

たしかに文革が華やかに展開され、文革派陣営内の勢力争いが激越に繰り広げられ、凄惨で酸鼻を極める武闘が日常茶飯化していた頃、反対派を糾弾するために「紅旗を振って紅旗に反対する」「毛沢東の旗を掲げて毛沢東に反対する」といった類の“慣用句”が多用されていたことがあったが、あれなどは「邏輯、語法、修辞に関する知識」のうちの極く初歩的なレベルだったということか。

『邏輯語法修辞漫談』が青年向けであるとするなら、「なぜ作文をシッカリと学ぶべきか」「作文材料の選び方」「作文テーマの選び方」「作文材料の取捨・配列の仕方」「文章構成、ことに導入の仕方と結論への導き方」「活き活きとした表現の仕方」「文章全体の論理的で簡潔な展開の仕方」などを分かり易く解説した『作文知識講話』は、児童少年向けに編まれた「邏輯、語法、修辞に関する知識」と位置づけられそうだ。《QED》