【知道中国 2674回】                      二四・四・仲六

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習340)

――アメリカとソ連の超大国を第1世界、アフリカ・ラテンアメリカなど他の発展途上国を第3世界と位置づけ、その中間にヨーロッパ・日本・カナダなどの第2世界が挟まれているとする。第1世界は最大の圧迫者・搾取者であり、新たな世界戦争の策源だ。第2世界は第3世界を圧迫・搾取する一方で、超大国の圧迫・搾取・脅威をも受けている。だから帝国主義と植民地主義の圧迫と搾取を最も深刻に受けてきた広範な第3世界こそが帝国主義、殊に超大国の覇権主義に反対する主力軍である――。

これが「3つの世界に関する偉大な戦略思想」の概要だが、喬は米ソ両超大国が進める軍縮を「論評を加える些かの価値も見出せない」とニベもなく否定した後、第3世界における民族解放、朝鮮人民の「自主と祖国の平和統一への正義の闘争」への支持を高らかに表明する。

さらには「長期間にわたって鍛えられたアフリカ人民は冷静な頭脳を持つ。彼らは帝国主義、社会帝国主義が口にする耳触りのいい話は信用しない。〔中略〕『万悪の植民地主義、帝国主義制度は奴隷と黒人売買と共に起こり栄えたが、黒人による徹底的な解放によって滅びる』と毛主席が語るように、アフリカの前途は、無限に光り輝いているのだ」と、アフリカの将来を讃えていた。なお「黒人」は原文では「黒色人種」と表現されている。

この演説から30有余年が過ぎたいま、中国とロシアによる超強気な覇権主義的攻勢に受け身に立たされた西側が「グローバル・サウス」などと“猫なで声”で接近しようとしても、第3世界の側は西側の振る舞いの底意を見透かしているようにも思える。いわば“時既に遅し”に近く、この劣勢を挽回するには相当な出血を覚悟しておく必要があろう。

現実的に中国はアフリカ各地のみならず第3世界に対し見境のないまでの膨張を展開し、かつて彼らが大声で非難していたアメリカ帝国主義もソ連社会帝国主義も真っ青な超大国膨張主義路線を爆走中だ。であればこそ、「国際社会における付き合いにおいて、中国人は断固として、徹底して、きれいさっぱりと、全面的に大国主義を消滅させなければならない」との毛沢東の奇妙な呟きが、改めて懐かしくも思い出されて仕方がない。

なお、喬冠華は国連総会出席後の欧州訪問中に本国に召喚され、四人組支持を根拠にして免職処分を受けている。

『偉大的歴史性勝利』は四人組逮捕を承け印刷・出版から店頭配置までの作業が超高速で敢行されたことが分かる。まさに四人組壊滅劇の記念碑的出版物と言ってもよさそうだ。

 真紅一色の表紙の上部に白抜きの大きな活字で「偉大的歴史性勝利」の8文字。中央には金色の天安門がデーンと描かれている。白地に真紅で「偉大的歴史性勝利」と記された中表紙を繰ると、大きな毛沢東の、次の頁が毛沢東の後継者で「英明な指導者」と形容された華国鋒の、共に上半身の写真。その次の頁は「我われの事業を導く核心的力は中国共産党である」「我らが思想の理論的基礎を指導するのはマルクス・レーニン主義である」「団結し、さらなる勝利を勝ち取ろう」と『毛主席語録』からの引用となる。

 目次を開くと、「偉大的歴史性勝利」、「首都百万軍民隆重集会慶祝偉大勝利 熱烈歓呼華国鋒同志為領袖 憤怒声討“四人幇”反党集団滔天罪行」、「継承毛主席遺志、高挙馬克思主義、列寧主義、毛沢東思想偉大紅旗 在華国鋒同志為首的党中央領導下勝利前進」、「華国鋒同志為首的党中央和台湾人民心連心 台湾省在京愛国同胞集会憤怒声討 各族人民共同死敵“四人幇”反党集団」「八億人民的盛大節日」などの猛々しくも勇ましい文字が躍っている。

どれもが10月24日、25日の両日の『人民日報』に掲載された四人組逮捕を祝賀する長文評論であるだけに、出版までの手回しの良さに呆れ返り、感服するばかり。《QED》