【知道中国 2671回】 二四・四・十
――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習337)
そこで先ず「告げる書」の性格を考えてみたい。
それが党国体制の中国における最高権力機構――中国共産党中央委員会、中華人民共和国人民代表大会常務委員会、中華人民共和国国務院、中国共産党中央軍事員会――によって「全党、全軍、全国各民族人民」に向けて連名で公式に発せられた点からも、少なくとも毛沢東の死の直後の共産党政権が内外に明らかにした《至上の国家意思》と見なすことが可能だろう。
そのうえ現在に至るまで公式に、しかも明確に完全否定されたとも聞かない。ソッと引き下げられたとも考えられるが、なんせ「毛主席の遺志」である。あだや疎かな扱いができるわけがない。ならば現時点でも「全党、全軍、全国各民族人民」を縛っていると考えられないこともないはずだ。
「告げる書」は先ず、「党の一元化指導を強化し、党の団結と統一を固く擁護し、党中央の周囲に緊密に団結する」。「労働者階級が領導する労働者と農民の連盟を基礎とする各族人民の大団結を固め、鄧小平批判を深化させ」、「ブルジョワ階級の法権(法律上の権利)を制限し、我が国プロレタリア階級の独裁をより前進させ」と記す。
以上を内政面とするなら、これに続く「毛主席の建軍路線を断固として執行し、軍隊建設を強化し、民兵建設を推し進め、戦備を増強し、警戒を高め、敢えて侵略を試みる一切の敵を殲滅する備えを常に怠らず。我われは断固として台湾を解放する」との部分が軍事面をカバーしていると考えられる。
次に外交姿勢を示しているのが「毛主席の革命外交路線と政策を引き続き、断固として、徹底して推し進める。〔中略〕我が国人民と各国人民、特に第三世界の国々の人民との団結を強化し、国際社会において手を結ぶことのできる総ての勢力と連合し、帝国主義、社会帝国主義と現代修正主義との戦いを最後まで徹底する。我われは永遠に覇権を唱えない。永遠に超大国にはならない」との部分だ。
「告げる書」をこう内政・軍事・外交の面に分けて読み返してみると、現在の習近平一強体制が強引に推し進める内外姿勢の根底に「毛主席の遺志」が見え隠れするのだが。
たしかに最高権力者が抱えた政治的な投機性が、現在の中国に見られる内政面での一層の強権化と外交面での頑ななまでの反米基調に大きく作用していること思う。だが、その根源を探れば、やはり「毛主席の遺志」に行き着くのではなかろうか。
以下、改めて「毛主席の遺志」から中国の現在を考えてみたい。
最初に「党の一元化指導を強化し、党の団結と統一を固く擁護し、党中央の周囲に緊密に団結する」との部分は、党総書記として臨んだ文革時代を彷彿させるような名称の「党史学習教育動員大会」(2021年2月20日)における発言から、習近平の手で達成されたと考えられる。
それというのも、同大会で習近平は「まさに今こそ、党史学習教育を全党が挙って進めるべき時であり、それは十分に必要である」し、「党の歴史的発展の主流と本質を正確に把握し、党史における重要な事件、会議、人物を正確に認識したうえで科学的に評価すべきである」と力説しているが、ここから党史解釈権を事実上手中に収めたとの習近平の自負が垣間見えるのである。
あるいはウイグルやモンゴルで実践されている中国語(漢語)教育の強制は、「各族人民の大団結」の一環と看做すことも可能だろう。もちろん、それが少数民族固有文化の破壊、漢族による「各族人民」に対する文化的ジェノサイドに通ずることであり、断固として許されない蛮行であることは敢えて指摘するまでもないことではあるが。《QED》