【知道中国 2665回】                      二四・三・念九

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習331)

 最初に挙げた『柳宗元《非〈国語〉》訳注(選)』と『法家著作選読 劉知幾著作選注』は共に法家を讃える内容で、その主張はこれまで見てきた同系列の著作と大同小異、いや小異もない。『方蠟起義』もまた6月に出版された同じ書名の『方蠟起義』の焼き直しといったところ。

 『天津人民反帝闘争史話 第二次鴉片戦争在天津』は、アヘン戦争(1840~42年)に次いで1856年に広州で起こした軍事衝突を奇貨として、一気に天津まで攻め上った英仏軍に対し、「天津人民がどのように英雄的な反抗を進めたのか?」を描く。

 最終的には1860年に清朝が屈辱的な北京条約を結ばされることで戦争は終わるわけだが、『天津人民反帝闘争史話 第二次鴉片戦争在天津』は列強の暴力による脅しに唯々諾々と屈服して祖国の富と民族の魂をオメオメと売り渡す清朝政権に対する怒声を背景に、「復仇の思いは胸いっぱいに広がり、怒りの炎は燃えさかり続ける」と天津人民の民族精神を大絶賛する。

 『青年自学叢書 簡明中国文学史 上冊』は中国文学史のうち秦代以前から唐代までを扱う。なお宋代から近代までは「下冊」で論じている。

 先ず文学史を学ぶ目的を、「毛主席の文化遺産を批判的に継承し、古を今に生かすとの方針を貫徹するため」であり、「民族の新文化を発展させ、民族の自尊心を高めるため」であり、「目下の偉大な運動を指導することに資するため」と規定する。

 それを以下の4項で「文学史と古代の文芸作品を読むこと」の意義を説く。いま骨子のみを記しておくと、

1)「我が民族の矜持、自尊心を養い強化する」

 2)「古代社会をよりよく認識することを助ける」

 3)「歴史上の政治思想領域の闘争の理解を促す」

 4)「文芸という武器を掌握することを助け、プロレタリア階級のための政治に服務する」

 ここで注目しておきたいのが、やはり「文学史と古代の文芸作品を読むこと」の意義の最初に「我が民族の矜持、自尊心を養い強化する」だろう。これに『天津人民反帝闘争史話 第二次鴉片戦争在天津』が説く「復仇の思いは胸いっぱいに広がり、怒りの炎は燃えさかり続ける」を重ね合わせると、なにやら四人組が推し進めてきた“超机上の空論”のような過激イデオロギー路線とは一線を画す雰囲気が感じられる。つまり民族主義への路線転換である。

 最後の『物体形状漫談』を素直に読み進むと、なんとも不思議な思いに駆られる。

改めて振り返るなら、出版されたのは毛沢東が死去する2ヶ月前で、四人組失脚の3ヶ月前だ。当時の常識では、表紙を開いた最初の頁に『毛主席語録』からの引用があってしかるべきだが、それがまったく見当たらない。いや、そればかりでない。全117頁の本文中に、毛沢東の著作からの引用は僅かに3ヶ所のみ。それも著者の主張を補強するのではなく、申し訳け程度に置かれているだけ。

この本は二等辺三角形と直角三角形の2種の三角定規の形状の説明から説き起こし、2種類の三角定規を様々に組み合わせることで、多種多様な2次元図形が描き出せることを説明した後、ボルトとナット、陸上競技のトラック、高いテレビ塔、パイプ、香取線香、橋梁、パラボラ・アンテナ、桶とコップ、タンクローリーに搭載される楕円タンク、六角形の蜂の巣などを取り上げながら、その形状が如何に合理的なものであるかを高等数学の数式を駆使しながら解説している。もちろん、数学が苦手な読者にも判り易く。《QED》