【知道中国 2589回】                      二三・一○・廿

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習255)

1974年10月には『《帝国主義是資本主義的最高段階》浅説』(《〈帝国主義是資本主義的最高段階〉浅説》編写組 上海人民出版社)が出版されている。その主張を簡潔に纏めてみると、

――偉大なる革命の導師であるレーニンが著した『帝国主義は資本主義の最高段階(以下、『帝国主義論』)』は、マルクス主義の基本原理に基づいて帝国主義の発生・発展・滅亡への必然性を徹底して分析している。だから『帝国主義論』を学習し、帝国主義者・修正主義者・反動派を徹底して歴史の彼方に埋葬する信念と決心をさらに強めなければならない。

我々は必ずや批林批孔の闘争を深化させ、林彪反党集団の売国主義・投降主義の天をも焦し尽くすような罪悪を徹底して暴き出し批判し、その害毒を徹底して洗い清め、国内の階級闘争を徹底して推し進め、世界の階級闘争を徹底して推し進めなければならない。

かくして「帝国主義制度の滅亡は避け難く、社会主義制度は必ずしや勝利する」。だからこそ、「断固として心を固め、犠牲を恐れず、万難を排して勝利を勝ち取ろう」(『毛主席語録』)――

こういった異常なまでに「徹底」が求められる大人社会の政治的動きは、当然のように子供の日常にも色濃く反映される。その一端を物語るのが『我写児歌来参戦 北京西四北小学紅小兵詩歌選』(人民文学出版社)だろう。

「出版説明」に拠れば、「北京西四小学校の広範な少年児童は、党中央・毛主席の大号令に断固として呼応し、批林批孔運動に積極的に参加した。彼らは革命の小猛将の気骨を漲らせ、運動の徹底した発展に緊密に呼応し、マルクス主義の観点に立ち、勇躍として革命の新しい歌を書き上げ、それらを武器にして、林彪と老いぼれ孔子のクソッタレに向かって猛烈な戦いを挑み、喜ぶべき戦果を挙げた」。そこで、そのうちの30ほどを『我写児歌来参戦 北京西四北小学紅小兵詩歌選』に収めた、とのことである。

「革命の小猛将」たちが声を限りに唱ったはずの「革命の新しい歌」だが、冒頭に掲げられた「無産階級文化大革命就是好(プロレタリア文化大革命はじつに素晴らしい)」からはじまり、「批林批孔大開展」「万首児歌轟林彪(あらゆる歌で林彪を粉砕する)」「紅小兵忠于党(紅小兵は党に忠誠を尽くす)」「林彪是個大壊蛋(林彪は超アンポンタン)」「批判林彪大壊蛋(林彪のオタンコナスを批判する)」「人民戦争偉力大(人民戦争の偉力は無限だ)」「読書為革命(革命のために勉強だ)」「世世代代于革命(世代を継いで革命を)」「教育革命掀高潮(教育革命は高まる)」と題名を追っただけでも、子供たちもまた大人と同じ政治的環境に置かれていることが分かろうというもの。大人は子供を煽るだけ煽る。

ここに見られる「革命の小猛将」たちの世代が半世紀ほどを経た後、李強首相ら習近平側近集団の世代と重なり合っていることを忘れるべきではないはずだ。であればこそ、習近平を中核とする党政治局常務委員会の開会前に「無産階級文化大革命就是好」や「紅小兵忠于党」、さらには「世世代代于革命」が高唱されていたとしたら・・・やはり「三つ子の魂」は空恐ろしい。

毛沢東思想の大きな柱である「自力更生」をテーマにした小説『大?』(上海電機廠《大?》創作組 上海人民出版社)も出版されている。電機設備製造工場を舞台に、海外からの技術を取り入れようと画策する経営首脳陣の妨害と闘いながら、現場の技術者を中心とする若手労働者が自力で巨大な発電機を完成させるまでの「工業戦線に依然として存在する前進と後退、復辟と反復辟の闘争を描き出す」(「内容提要」)のだが、冒頭から大団円まで、余りにも硬直化・類型化した表現に辟易とさせられるばかり。《QED》