【知道中国 2588回】 二三・一○・仲八
――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習254)
1974年10月1日。国慶節のこの日、党理論誌『紅旗』は梁効の「研究儒法闘争的歴史経験」を発表し、中央政権内部に「法家領導集団」が出現したことを唐突に打ちだした。同集団が四人組を指すことは言うまでもないだろう。
この頃になると、毛沢東の肉体的衰えと周恩来の病状悪化が進む一方、毛沢東は鄧小平の復活に向けて動き出す。そこで梁効の「研究儒法闘争的歴史経験」を第一弾にして、政権掌握に向けた四人組の策動が活発化する。
14日に毛沢東が鄧小平の国務院第一副総理就任を提案するや、四人組は王洪文を長沙で静養中の毛沢東の許に向かわせ、「周恩来の病室に常に鄧小平、葉剣英、李先念が集まっている」と、四人組に反対の立場に立つ長老の動きを伝える。これに対し毛沢東は、「江青には気をつけろ。ヤツとグルになって動くなよ」とクギを刺した。
20日になると、毛沢東の指示を背景に鄧小平は党副主席、第一副総理、党中央軍事委副主席、人民解放軍総参謀長のポストを兼任する。まともに動けない毛沢東と周恩来に代わって、中国を切り盛りする役柄を鄧小平に任せようというわけだろう。かくて四人組は焦りを募らせ、権力奪取にて向けてアクセルを踏み込むことになる。
相変わらず批林批孔闘争関連の出版は続くが、手許に残るのは『学習毛主席関于批孔的論述』(人民出版社)、『《学点歴史》叢書 罪悪累累的孔府』(山東大学歴史系・曲阜師範学院歴史系・孔府罪悪格調査組編写 人民出版社)、『《学点歴史》叢書 魯迅雑文的社会歴史背景』(人民出版社)、『労働人民反孔闘争史話』(唐暁文 人民出版社)。これに儒法闘争関連では『儒法闘争史文章選輯(二)』(生活・讀書・新知三聯書店香港分店)、『論法家和儒法闘争』(人民出版社)、『読《塩鉄論》』(人民出版社)を付け加えておきたい。
著名な古代史学者から筆杆子までを総動員しての著作の数々だが、これまで散々見てきたように内容はほぼ同じで、結論に“寸分の狂い”もない。
――「孔孟の道は腐れ果てた搾取階級の意識形態であり、広範な労働人民の意識と対立している。現在までの2千数百年余、我が国の労働人民は反孔闘争の高波を巻き起こすことを止めることなく、搾取階級が必死に守る旧秩序への挑戦を激しく繰り返してきた。
「労働人民の反孔闘争は、搾取階級による反動的統治システムをひっくり返そうとする闘争の全過程における一部分である。労働人民の孔孟の道に対する批判、孔孟の道に支えられた反動統治制度に対する反抗と闘争は、歴史を発展させる原動力である。
「我が国の歴史において、儒家と法家の闘争は一貫して激烈であった。何千年来、法家は一貫して反動派の攻撃と汚辱に晒されてきた。ゆえに批林批孔闘争は歴史的使命を持つ。
「古来、労働人民は一貫して反孔闘争の主力軍であり、革命は須く孔子に反対するものでなければならない。これこそ階級闘争の歴史が我々に遺してくれた一筋の、なにものにも代え難い宝物である。
「もちろん階級と時代には限界がある。だから奴隷階級であれ農民階級であれ、孔孟の道が内包する階級性と反動性を徹底して明らかにすることはできない。孔孟の道に対し徹底して勝利するという歴史的任務は、ただマスクス・レーニン主義、毛沢東思想に基づいて武装したプロレタリ階級によってのみ完遂させることができる。
「偉大なる領袖である毛主席が自ら発動し指導する批林批孔運動は、いままさに深化し、社会の隅々にまで浸透し、持続して展開されている。これこそ上部構造においてマルクス主義が修正主義に勝利し、プロレタリア階級がブルジョワ階級との間の政治闘争と思想闘争に勝利したことの証だ」
――だが文革は、なぜか「孔孟の道」に勝利したわけではなかった。《QED》