【知道中国 2582回】 二三・九・念九
――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習248)
『軍事基本知識』(《軍事基本知識》編写組 上海人民出版社)は、巻頭に「民兵こそ勝利の根源である」(『毛主席語録』)の一句が掲げる。
目次にザッと目を通してみると、まさに「軍事オタク垂涎の的」と形容するに相応しいほどに多岐にわたる内容が全383頁にぎっしりと詰め込まれている。
目次に沿って概要を紹介しておくと、
隊列の組み方から始まり、歩兵銃・突撃銃・軽機関銃・重機関銃の操作・メンテナンス・故障防止法、射撃の基本、銃剣格闘術、手榴弾の扱い方、爆弾・地雷の製法と防御法、土木工作(塹壕・掩体壕など)、渡河方法、小部隊に関する戦術基礎知識、行軍・宿営・偵察・警戒・通信、航空機・落下傘兵・戦車に対する攻撃法、原子爆弾・化学兵器・最近兵器に対する防護法などが分かり易いイラスト入りで詳細・明瞭に解説されている。
編者は「広範な知識青年の実際の求めに応じ、毛主席の軍事思想を広めるため、執筆編集段階で以下のいくつかの点に可能な限り留意した」とし、次の3点を挙げる。
(1)全体の構成と資料選択に当たり、可能な限り理論と実践の結合を目指し、民兵訓練の内容と一致させた。
(2)平易な記述と分かり易さに努め、自学自習の便に供した。理論知識と技術動作を示す際には、可能な限りイラストを配し、理解を進めるよう試みた。一般兵士が常時使用する武器に関しては、先ず兵器の構造と原理を解き明かし、読者が他の同系列の兵器を使用する際にはスムースに実践使用できるようにした。
(3)通常携行する小火器で航空機、落下傘兵、戦車などを攻撃し、あるいは「土器材(身近な器材)」や「土方法(伝統的手法)」を用いての原爆・化学・細菌兵器などの防御法を重点的に紹介しておいた。
まさにこの通りの記述であり、この1冊をマスターしたなら相当に優秀な民兵になれるだろうと、素人ながら容易に想像できる。
ここで注意しておくべきは、『軍事基本知識』は「我々の原則は党が銃を指揮することである」との毛沢東軍事思想における大原則に徹底して貫かれていることだ。「銃(原文は「槍」)」は、飽くまでも党――共産党の用語で示すなら「党の核心」「党中央」、つまり党のトップ――に絶対服従しなければならない。これが共産党の大鉄則なのだ。
いま改めて「毛沢東を頭領とする党中央こそ全党団結の核心」との主張に貫かれた『増強党的団結』(2580回参照)が『軍事基本知識』と同じく1974年9月に、同じ上海人民出版社から大量――前書は55万冊、後書は50万冊――に出版された事実を重ね合わせて考えると、やはり四人組が権力の頂点を目指しイチかバチかの賭けに打って出たとも思えてくる。とするなら『軍事基本知識』には、四人組政権樹立のための「銃」たらんとする民兵組織を上海に打ち立てようとする企ての一環とも考えられる。
『全面規画 加強領導 上海市嘉定県安亭公社新涇大隊制定農業発展規画介紹』(上海人民出版社)は、上海郊外を舞台に、かつての荒れ果てた貧困極まりない寒村が豊かな農村に大改造された根本要因は、「なにごとかをなそうとするなら、先ず方針・方法・計画・政策を確定することが決定的に成否を左右する」との毛沢東の教えを忠実に履行した点にあると強く訴える。
『人民公社在躍進 上海郊区人民公社新経験』(上海人民出版社)には『全面規画 加強領導』と同じような趣旨の論文や実践報告が収められている。「前言」に拠れば、上海郊外の人民公社においては「毛主席の革命路線を貫徹することで学び得た多くの新しい経験」が身に付き、それこそが「なにものにも代えがたい精神の宝となった」とか。《QED》