【知道中国 2577回】 二三・九・仲七
――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習243)
『加強党的一元化領導』は90頁に満たない小冊子だが、冒頭に「我々の事業を領導する核心的力量は中国共産党である」「我々の思想の理論的基礎はマルクス・レーニン主義である」「工、農、商、学、兵、政、党の七つの部門においては、党が一切を領導する」「団結し、さらなる勝利を勝ち取れ!」(『毛主席語録』)が置かれているだけあって、やや大袈裟に表現するなら、読み進むに従って行間からある種の“緊張感”が立ち上ってくるようにも思えるから不思議だ。それは一連の批林批孔闘争、あるいは儒法闘争に関する書籍が持つ“出来レース”のような雰囲気とは明らかに違って感じられる。悲壮感さえ漂う。
「偉大領袖毛主席」の発言を巧みに引用しながら、ムダのない文体で共産党独裁の生命線が「党の一元化領導」にあることを冷徹に説いている。それらを簡潔に整理してみると、
――なぜ「党の一元化領導を強化しなければならないのか」。それがプロレタリア階級による革命を勝利に導く決定的に重要な保証だからである。
「党の一元化領導」によってこそ、党の各段階の組織を貫徹して正確な思想と政治路線の実現を正確に執行できるのである。
「党の一元化領導を強化する」に当たっては、注意深く大局を掴まなければならない。
「党の一元化領導を強化する」に当たっては、党における民主集中制を真剣で正確に貫徹し執行しなければならない。
「党の一元化領導を強化する」に当たっては、党委員会の革命化建設をやり遂げなければならない。
「全党が中央に服従する。これが党一元化領導の最高組織原則である」――
以上、『加強党的一元化領導』の主張の要点を示してみたが、末尾は次のように結ばれている。
「中国共産党は偉大な党、光栄ある党、正確な党である。党の一元化領導はプロレタリア階級独裁を強固にし、資本主義の復辟を防止し、プロレタリア階級の革命を徹底して遂行する確実な保証である。党の組織は経験を必ずや真摯に総括し、自覚的に党の一元化領導に服従し擁護する。党の一元化領導の下で毛主席のプロレタリア階級革命路線に沿って団結し、さらなる勝利を勝ち取ろう!」
「党の一元化領導」が絶対的な存在への権力の一極集中、つまり強固な独裁体制を意味することは異論のないところだろう。『加強党的一元化領導』を、もはや不可避となりつつある“毛沢東の不在”を前に、次の時代の共産党像を構想したものと考えるなら、やはり100万部という当時の上海人民出版社としても例を見ないほどにケタ違いに多い出版部数に注目しないわけにはいかない。
今は『加強党的一元化領導』を考察するにための材料を持ち合わせていないから、以上は単なる印象記に過ぎない。だが現在の習近平政権の強固な独裁――まさに「党的一元化領導」――を見せつけられれば、『加強党的一元化領導』の意味は決して軽くはないはずだ。
以下、1974年7月分の出版部数を上げておく。記載なしは省略。
『風濤集』(上海人民出版社)=10万部
『法家研究 論法家』(上海人民出版社)=2.5万部
『工農知識青年自学読物 《歴史叢書》読一点法家著作 一』(人民教育出版社)35万部
『公孫龍子 訳註』(上海人民出版社)=40万部
『無産階級文化大革命就是好』(上海人民出版社)=10万部
『上海地理浅話』(上海人民出版社)=16万部
『加強党的一元化領導』(上海人民出版社)=100万部 《QED》