【知道中国 2551回】 二三・七・仲八
――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習217)
批林批孔関連に次いで歴史関連が『辛亥革命』(林増平)、『十八世紀末法国資産階級革命』(華中師範学院歴史系)、『蔡特金』(丁建弘)の3冊で、中華書局発行の「歴地知識読物」叢書に組み込まれている。
20世紀初頭の中国と18世紀末のフランスにおける革命の経緯を示し、共にブルジョワ革命に過ぎなかった。やはりプロレタリア階級の社会主義革命であってこそ「一切の搾取制度を根絶させ、全人類を解放できるのだ!」との同じ結論を導きだす。
「蔡特金」とはツェトキンの漢字音訳で、『蔡特金』はドイツ社会民主党、ドイツ独立社会民主党(スパルタクス団)、ドイツ共産党などに参加し、初期の国際的女性解放運動指導者として知られるクララ・ツェトキン(1857~1933年)の評伝である。一読して感ずるのは、なぜ、彼女の評伝が文革中、しかも批林批孔の時期に出版されなければならないのか。出版の真意・狙いが、どうにもよく分からない。
歴史関連に続いて出版されたのが『政治経済学基礎知識』(《政治経済学基礎知識》編写組編 上海人民出版社)である。
この本は「資本主義部分」(上冊)と「社会主義部分」(下冊/1974年5月)の2冊で構成され、「毛主席の『青年世代の成長に関心を持つべきだ』とのお教えに基づき、数多くの下郷上山(農山村に入植)した知識青年が自ら学ぼうとする要望に応ずべく、特に編集し出版した」とされる「青年自学叢書」シリーズの一部である。
四人組が猖獗を極めた時期、しかも四人組御用達宣伝機関であった上海人民出版社からの出版であればこそ、硬直した議論が過激に展開されてしまうのも致し方ないことだろう。振り返ってみるなら、凡て狂顛怒濤の時代がなせるワザだった。
冒頭で「青年がマルクス主義に通暁し、修正主義批判を深化させ、自覚的に世界観を改造し、より素晴らしい戦いを進め、より健康的に成長するためには政治経済学を学ぶべし」という「偉大な領袖毛主席の数次に及ぶ教導」を掲げ、社会主義の素晴らしさを讃えてみせる。そこで、その“論証”の跡を追ってみると、
――人類は原始社会、奴隷社会、封建社会と進んだ後に商品と価格によって左右される資本主義社会に突入したことで、資本家と労働者、搾取と被搾取の関係が生まれ、社会における富者と貧者との格差は拡大するばかりである。
資本を蓄積することで資本家は社会を支配し、富を収奪されることで労働者は資本家の奴隷に堕す。資本主義制度は必然的に持つことになる不況という不治の病を克服するため、帝国主義化への道は避けられない。超独占資本主義でもある帝国主義は腐って野垂れ死にする直前の資本主義であるからこそ、それは社会主義革命の前夜を意味する。
ソ連は社会主義のカンバンを掲げるが、実態はアメリカ帝国主義の軍門に下った社会帝国主義であり、だからこそ世界の労働者階級が打倒すべき“犯罪的存在”なのだ――
以上が「資本主義部分」の大意だが、これに続いて「社会主義部分」が展開されることになる。
――社会主義はプロレタリア階級独裁という人類史における新しい時代を切り拓いた。社会主義生産関係の基礎は社会主義公有制であり、農業の社会主義化こそが強固な社会主義社会の基盤となる。社会主義公有制は不断の闘争を経て強化され発展し、社会における生産の性質を根本的に変化させ、より速く、より効率的な発展をもたらすことになる。
計画経済によって、社会主義下の国民経済は農業を基礎に工業を導き手として発展するが、厳格な節約と監査・監督制こそが経済運営の重要な原則である――
これで「社会主義部分」は終わりではない。もう少し続く。《QED》