【知道中国 2547回】                      二三・七・一○

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習213)

 

 文革中国が当時の世界をどのように見なしていたのか。それを知ることのできる1冊が『主要資本主義国家経済簡史』(?・宋・池・郭・朱編著 人民出版社)だろう。

この本は「資本主義が発生・発展し衰亡に向かう歴史を読者が全面的に理解することを助けるため」に、英・米・仏・独・日の「5つの主要資本主義国家経済の発展過程を具体的に綴った」とする。

だが、「我われのプロレタリア革命事業必勝への信念を強め、我われのプロレタリア国際主義の覚悟を高め、毛主席のプロレタリア階級革命路線をより深く理解し推し進め、全人類の徹底した解放のために英雄的な闘争をなす」という大前提があることを忘れてはならない。つまり「全人類の徹底した解放のため」にこそ、「5つの主要資本主義国家経済」の「衰亡に向かう歴史」を学ぼうというわけだ。

「資本主義生産関係が西欧で最初に生まれてから第2次世界大戦が終結するまでの間、資本主義制度は自由競争資本主義と独占資本主義の2つの段階を経ている」。「1917年のロシア10月社会主義革命の勝利は世界の資本主義体系の根底を震撼させ、世界史に新紀元を創出した。この時から資本主義制度は決定的危機段階に突入した」との総論を示した後、各論を展開し、5ヶ国それぞれの資本主義経済の発展の姿を分析している。

先ず「資本主義国家の老舗」であるイギリスを、「世界資本主義発展の歴史上、資本の原始蓄積と工業革命の典型であり、世界の工業と市場において長期間独占的な地位を押さえていた」と捉え、「歴史上、世界最大の殖民地帝国であり、200余年の長期にわたって広大な殖民地と半殖民地国家の人民を残虐にも略奪し搾取してきた」。「同時に最も早く没落した帝国主義国家」だと断定する。

次いで「現代における帝国主義超大国」のアメリカについて、「200年前はイギリス統治下の殖民地に過ぎなかった」が、反英独立戦争、独立、資本階級による共和国建国を経て急速に発展し、「20世紀初頭に帝国主義段階に進み、独占資本主義が最高度に発展した帝国主義国家となった」。「2度の世界大戦期、戦争特需で大いに潤い、国際金融搾取の中心となり、世界の覇権を唱えるようになった」。その「資本主義発展史は薄汚れた搾取と略奪による血塗られたものであり」、「マルクスが指摘しているように、アメリカにおいて資本主義は他のどのような国家とは比較にならぬほどに恥ずべき条件の下で発展した」とする。

「イギリスと同様に古い資本主義国家」であるフランスでは、第2次世界大戦終結直後、「フランス最大の政党であった共産党の指導集団が高い官職と高給と引き換えに恥ずべきことに資本階級と妥協し、武器を差し出し、武装闘争を放棄し、3年ならずして反動勢力の手で政権から叩き出され、残酷な弾圧に遭遇することになったしまった」とのことだ。

「後発資本主義国家のドイツ」は2度の世界大戦期に「国家独占資本主義段階に突き進み、当時の資本主義世界の最高水準に達したが、最終的に没落する運命には逆らえない」。主要な資本主義国家の中では「最後発」である日本における「帝国主義の歩みは日本軍国主義による中国・朝鮮侵略史でもある。日本の近代100年は、如何なる国家であれ侵略、戦争、軍国主義に靠れかかった経済発展を夢想するかぎり、最終的には破綻という歴史の運命からは逃れることが出来ないことを明白に物語っている」と結論づけている。

ともかくも「1949年に中国人民革命が偉大な勝利を勝ち取り、アジア・アフリカ・ラテンアメリカの多くの国家は次々に民族独立の道に突き進む」わけだが、「高い官職と高給と引き換えに恥ずべきことに資本階級と妥協し」たなどと、時として北京における「共産党の指導集団」に見られる“浅ましい姿”を連想させるに十分な記述が随所に見られるだけに、文革というより習近平政権下の現在の中国を考えさせられてしまうのだが。《QED》