【知道中国 2517回】                      二三・四・念一

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習183)

 

 『祖国的好山河』の巻頭には、『中国革命与中国共産党』(1939年12月)に記された中国の国土に対する毛沢東の考えが置かれている。

 「我らが中国は世界における最大の国家の1つで、その領土は欧州全体の面積に匹敵する。この広大な領土に備わっている広大で地味豊かな田畑と肥沃な土地は、我らにとって衣食の源となっている。縦横に走る山脈は広大な森林を育み、豊かな鉱物資源を蓄えてくれている。多くの河川・湖沼は水運と灌漑の利便をもたらしてくれる。長い海岸線は海外の各民族との交流の便をもたらしてくれる。遠い古代から始まって、我ら中華民族の祖先はこの広大な土地で労働し、生活し、そして数を増やしてきた」

『祖国的好山河』は、この毛沢東の考えで貫かれている。“1ミクロン”のブレもない。

 ――「我らが偉大なる祖国はアジア大陸の東南部に屹立し、西は世界最大の大陸である亜欧(ユーラシア)大陸に繋がり、東は世界最大の海洋である太平洋に臨んでいる。祖国の領土は広大無辺であり、祖国の地形は多種多様であり、祖国の天然資源は他に較べようもないほどに豊穣である」

「我ら中華民族の祖先は遥かな古代から、この広大な大地の上で労働し、生存し、仲間を殖やしてきた」

「(1949年に)人民が自らの政権を樹立して以後は、中華民族は歴史の新しい1頁を開いた」

「偉大なる領袖である毛主席は『社会主義は旧社会から労働者と生産資源(手段、資源、技術など)を解放しただけではなく、旧社会では利用することの出来なかった広大な自然界の解放をも成し遂げたのだ』と指摘する」――

 かくも昂揚した文章で始まる『祖国的好山河』は「祖国的好山河(祖国の素晴らしい山河)」を、「山河の概要(地勢・河川・山脈)」「荘厳なる山々」「高原と盆地」「平原と丘陵」「海洋と島嶼」「数多の河川」「豊富な鉱物資源」の章に分け説き明かそうとする。

 「海洋と島嶼」の章の「台湾諸島」の項には、「釣魚島諸島は台湾本島の東北100海里の大陸棚上に位置し、釣魚島一帯は我が国東海の漁場であり、古来、福建、台湾などの漁民はこの海域で一貫して漁をしてきた。これらの島嶼は、早くも明代に我が国防区域内に置かれ、我が国の台湾省に付属する島嶼である」と、尖閣諸島の領有を高らかに主張している。

 尖閣列島の関する記述に見られるように、他国の国土を勝手に自分たちの版図に組み込んでいるようなデタラメで超身勝手な政治的記述も見受けられるが、総じていうなら中国の地理紹介書としては簡明で要を得たものといえるだろう。

だが出版が文革期であればこそ、政治的に冷静であり続けられるわけがない。巻末の「結束語」に至って、それまでの抑え気味の記述は消え、一気に煽りに気味に転ずるのは致し方がないだろう。

 ――「20数年前、我らが偉大な領袖である毛主席は全世界に向かって、『全人類の4分の1を占める中国人は、いま立ち上がった』『中国の命運は人民自らの手に握られ、まるで中国は太陽が東から昇るように、自らの輝かしい光で大地を遍く照らし出した』『我らは旧い世界を見事に打ち砕いただけではなく、新しい世界を立派に建設するだろう』と厳かに宣言した。歴史の発展は、毛主席の偉大な予見を雄々しく明らかにした」

 「20数年来、我が国各民族人民は毛主席を首(かしら)とする党中央の周囲に堅く団結し、修正主義路線の破壊と干渉を絶え間なく排除し」、「『断固として中国を改造する』という高邁な気概を胸に天と戦い地と競い、自然改造闘争でも輝ける戦果を獲得した」《QED》