【知道中国 2507回】 二三・三・卅
――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習173)
産軍共同体(軍産複合体)だから、「今日の大臣は明日は銀行家。今日の銀行家は明日は大臣」(レーニン)が常態化する一方、巨大企業は競って退役高級軍人を囲い込む。
1969年には、退役した2072人の高級軍人が軍需産業界100社に、そのうちの3分の1ほどが5大軍需企業に天下った。このような軍需産業と軍人との強固な結びつきによって動かされているアメリカこそ国民経済の軍事化が最も深刻化した国であり、それゆえ『美国経済的衰落』との書名に示されたようにアメリカ経済の「衰落(没落)」は不可避となる。
著者はアメリカ経済の軍事化をドルのうえに築かれた「戦神」と「財神」の同盟と表現し、アメリカの防衛予算拡大の裏側を明らかにした後、だからアメリカの大資本は国際的緊張を作り出すことに日夜腐心し、各種各様の侵略戦争を世界各地で画策しているのだとも告発してみせる。
こういった情況こそが「偉大なる領袖の毛主席が『戦争を渇望し、平和を望まないのは、帝国主義国家にあって侵略によって金儲けを目論む少数の独占資本集団だけである』と指摘されている」ことに繋がるわけだろう。
経済(ということは当然のように政治も)が不均衡な発展をみせるのが資本主義の避けることの出来ない宿痾であり、帝国主義段階に至って不均衡は激化する。これは独占資本による統治が競争を終焉させえないばかりか、独占と競争が車の両輪のように相乗効果を挙げることで各国独占資本間の競争が過激化し、全ての資本主義生産の無政府状態化が激しく進んでしまう。
同時に科学技術が絶え間なく発展し、後発の資本主義諸国が最新科学技術の成果を駆使し、他の条件を活用することで先行する資本主義国を追い上げ追い抜くことが可能となる。かくして旧い資本主義国家は独占資本による政治支配が原因となって起こる老朽化と寄生性とが顕著になり、かくて一気に没落せざるをえない。ちょうどアメリカがその段階にあることを、『美国経済的衰落』は強く指し示す。
かくて「アメリカ経済の没落はアメリカの侵略政策、拡張政策と戦争政策がもたらし、内外各種矛盾が拡大した結果であり、腐り果て没落した帝国主義自らが招いたものだ。歴史の規律には絶対に抗うことができない」と結ばれる。
『美国経済的衰落』を閉じたところで、テーマが関連するので同じ1973年の12月に出版された『主要資本主義国家経済簡史』(?・宋・池・郭・朱編著 人民出版社)を先に読んで置くのも一興だろう。
『主要資本主義国家経済簡史』の狙いは「資本主義が発生・発展し衰亡に向かう歴史を読者が全面的に理解することを助ける」ことにあり、そこで英・米・仏・独・日の「5つの主要資本主義国家における経済の発展過程を具体的に記した」とのこと。
だが、その大前提は「我われのプロレタリア革命事業必勝への信念を強め、我われのプロレタリア国際主義の覚悟を高め、毛主席のプロレタリア階級革命路線をより深く理解し推し進め、全人類の徹底した解放のために英雄的な闘争をなす」こと。つまり「全人類の徹底した解放のため」にこそ「5つの主要資本主義国家経済」の「衰亡に向かう歴史」を学ぶ必要があるわけだ。
「資本主義生産関係が西欧で最初に生まれてから第二次世界大戦が終結するまでの間、資本主義制度は自由競争資本主義と独占資本主義の2つの段階を経ている」。「1917年のロシア10月社会主義革命の勝利は世界の資本主義体系の根底を震撼させ、世界史に新紀元を創出した。この時から資本主義制度は決定的危機段階に突入した」との総論を示した後、各論を展開し、5か国それぞれの資本主義経済の発展の姿を分析するのであった。《QED》