【知道中国 2473回】                      二三・一・初九

――習近平少年の読書遍歴・・・“あの世代”を育てた書籍(習139)

著者は北京旅行の往復で社会の現実を見てしまったことから、毛沢東と文革に対し疑問を抱くようになる。

上海では劣悪な環境で働く女工を目にした。杭州ではトイレまで押しかけてくる売春婦に面食らい、安徽省では沿線に溢れる乞食と飢えた子供たちを車窓から眼にして心を痛める。これが建国から20年ほどが過ぎた“偉大な祖国”の嘘偽りのない姿だったのだ。

著者は毛沢東に利用されたのではないかと疑問を抱き、やがて毛沢東政治のカラクリに思い至る。その時、解放軍が文革の引き起こした社会混乱収拾に乗り出したことを知る。解放軍は紅衛兵のうちの毛沢東に疑問を持つ勢力を異端分子と見なし、その討伐に動き出す。ヤバイ。逃げろ。だが国内に安全な居場所はない。イチかバチかで国外脱出に賭けた。

だが大多数の紅衛兵は、逃げも隠れもせず中国を生きるしかない。そんな彼らも、いまや70代から80代の老境だろう。あれから半世紀余が過ぎた現在も悔い改めることなく、なおも胸を張って毛沢東を熱烈に信奉している元紅衛兵がいたとするなら、是非にも話を聞きたいものだ。

この辺で毛沢東思想の“本格学習”に戻り、先ずは手引き書とも言える『毛主席的五篇哲学著作中的歴史事件和人物簡介』(人民出版社 2月)から始めたい。

「毛主席は歴史学習を一貫して重視してきた」。「歴史学習は革命の導き手が指し示す革命の道理を我われがより的確に身につけ、内外における現在の階級闘争の形勢を正確に理解することを助け、かくして我われの階級闘争、路線闘争、プロレタリア独裁下での継続革命への覚悟を高める」

そこで『実践論』『矛盾論』など毛沢東の代表的な哲学著作において言及されている歴史的な事件や人物にかんする知識を、「学習に即応させるべく、簡単明瞭に要点を絞り、重点的に提供しよう」と出版されたのが、『毛主席的五篇哲学著作中的歴史事件和人物簡介』である。

フランス革命やロシア革命、コペルニクスやトロツキーなど中国以外の事件や人物も扱われているが、取り敢えず中国の歴史的事件として扱われているアヘン戦争(1840年)から国共内戦(1946年~49年)までの19項目の中から興味深いものを拾い、それらに対する評価を見ておこう。

■アヘン戦争(1840年)=「中国社会の性質の変化に従って、中国人民の革命運動は外国の侵略と国内の封建勢力に拠る圧迫に反対するという二重の任務を帯びたのである。1840年、中国近代100年における偉大なる革命運動の感動と涙の歴史物語が始まった」

■日清戦争(1894年)=「1895年に占領されてから1945年に中国に還るまでの日本帝国主義による残虐な統治が続いた期間、台湾同胞は祖国の懐に還るべく闘争を間断なく続けた。彼らは英雄的で不撓不屈であり、何回倒されようが断固として闘争を止めず、日本帝国主義占領者に対し涙なくしては語れないような戦いを続け、大規模な武装蜂起は20数回に及んだ。このことは中国人民が外国の侵略者には永遠に征服されることはなく、中国の領土は外国の侵略者に永遠に分割されることはないことを明々白々に物語っている」

■義和団事件(1900年)=「義和団運動の革命的業績は、近代中国人民の反帝反封建闘争史において永遠の輝きを放ち、中国人民を励まし続ける」

■辛亥革命(1911年)=「中国を260年に亘って統治した清朝は倒れ、2千年以上続いた封建君主専制体制も最後の幕を閉じた。だが、中国共産党の指導がなく、プロレタリア階級の自覚を持って革命に臨まなかったことから辛亥革命は流産し、政権は袁世凱を筆頭とする北洋軍閥の手に落ち、中国は依然として半封建半植民地の地位に止まった」《QED》