【知道中国 437回】 一〇・八・念四
――タイ中協力タイ高速鉄道網建設、着工へ向け動き出すのか
どうやらタイ中鉄道網整備・建設は実行段階に入ったようだ。ここ数日の動きを追ってみると、
■18日、北京駐在のタイ大使は、タイ中協力に拠るタイ国内鉄道網整備・建設の方向が2週間以内に固まり具体的に始動することになるだろうと語っている。総事業費8000億バーツ規模の一大プロジェクトの第一弾は、やはり首都と東部臨海工業地帯とを結ぶバンコク・ラヨン線になるとのことだ。
じつは05年前後からマプタプットに鉄鋼生産で中国の上位に位置する首鋼集団、バンパコンやラカバンには中国最大手バイク集団の嘉陵集団や江門裕摩托集団、上海汽車、今春北欧のボルボを買収した吉利集団など大手自動車メーカーなども進出。まさに東部臨海工業地帯は中国企業の東南アジア進出のための一大拠点と化した感なきにしもあらず。
であればこそ、中国がバンコク・ラヨン線に高い関心を持つはずだ。それにしても85年9月のプラザ合意以後、日本の製造業が大挙して東部臨海工業地帯に押し寄せ、一大活況を呈した頃が夢幻のように思い出される。
伝えられるところでは、同大使は中国における最近の鉄道技術の長足の進歩ぶりを高く評価すると共に、先月半ばに訪中したステープ副首相と中国側の鉄道部長との間で計画は基本合意に達し、両者は今年頭に発足した中国ASEAN自由貿易区にとっても、タイの鉄道整備・建設がプラス効果を上げるという基本認識で一致したとのことだ。
また同大使は①自由貿易区という大きな枠組みの中での対中貿易の拡大、②タイは西南中国とASEANを結ぶ陸・水・空路で結ぶ回廊であり、それゆえに自由貿易区発展の基盤となる、③既に完成している中国発タイ・マレーシア経由でシンガポールを結ぶ3本の陸上ルートに加え鉄道網整備・建設も着々と現実化している――以上を強調すると同時に、一連の措置でASEANと中国は「双贏(ウイン・ウイン)」の関係を築くことになるとの見方を示した。
■20日、タイ中合資鉄路委員会のコーッサック主席は中国側技術団はタイを訪問し、タイを縦断する東北タイの基点であるノンカイから南タイのソンクラーまでの鉄道建設路線につき技術評価調査を実施することを明らかにすると同時に、20日には中国側との基本的話し合いを実施した。
タイ政府筋に拠れば、すでに中国側は4億ドルの資金に加え資材・人員の準備に取り掛かっているとのことだ。とはいえタイ側に若干の問題が残る。先ず法律だ。現行法を厳密に解釈するなら外資の鉄道経営への参加は認められないゆえに、今回のタイ中高速鉄道建設は違法とまではいえないまでも法に抵触していることになる。閣議了解、国会承認を取り付けるためには若干の時間が必要であり、覚書調印は当初予定された9月5日より延期となるだろうが、今年中の覚書調印は可能との見方が強い。
■20日夕刻、ハノイで開催中のメコン河サブリージョナル会議(GMS。漢語では「大湄公河次区域会議」)において、この地域に国境を跨いだ鉄道網の建設を目指すことが議決された。因みに瀾滄江=メコン河は源流のチベット高原から河口のメコンデルタまで全長で4800キロ。中国南西部、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ヴェトナムの流域住民は約3億人。
現況のまま推移するなら、この地域の鉄道は中国標準を適用、となるのか。 《QED》