【知道中国 350回】                         十・二・初九

良い子の諸君、革命のために大いに、仲良く、元気に遊びたまえ・・・
『体育花朶向陽開』(北京市東城区革命委員会文芸組 人民体育出版社 1974年)



 文革時代は、毛沢東が掲げる「教育を受ける者が徳育、智育、体育などの方面で成果をえて、社会主義の自覚を持った文化労働者となれるようにすべき」との「我々の教育方針」に従って、体育もまた大いに提唱されていた。

 そこで、毛沢東の求める体育とはなんなのかとの疑問が湧いてくる。この絵本に描かれた可愛らしくも革命的な子供たちが飛んだり跳ねたりする姿をみていれば、そんな疑問はあっという間に氷解するだろう。

 「児童ラジオ体操」と題された絵には、赤いスカーフを首に巻き両手を水平に、左足を斜めに挙げてバランスを取っている将来の革命の担い手たちが可愛らしく描かれ、「ラッパの響きに歌声高く、赤いスカーフ風に舞う。頭を挙げて胸張って、体を捻り腰を曲げ。一二三四声揃え、一糸乱れず意気高く。毎日体操、しっかり鍛え、労働学ぶはいい気持ち」とある。次のページの絵は「運動場」。走ったり、飛んだり、投げたりして遊んでいる運動場風景の横に、「丈夫な体を作りましょう。革命重責担うから」。海岸風景の「水泳」は、「魚のように水中を、風や波にも負けません。体を鍛え革命だ」。「バスケットボール」と題された絵には「ボールを持って素早く走り、パスは絶妙相手をかわし。機智勇敢に落ち着いて、政治がなにより大切だ。先輩たちは微笑んで、『子々孫々にうまくなる』」。

 草の上でまりを突いて遊ぶ女の子の肩辺りで蝶が戯れる「まり突き」では、「小さなボールはまん丸で、友達だれもが大好きよ。仲良く遊び競い合い、どなたがイチバン頑張るの。今日は体を鍛えましょ、明日は革命受け継ぐの。しっかり、しっかり、しっかりと」。赤いスカーフを首に巻く丸いホッペの女の子達が楽しげに遊ぶ「縄跳び」は、「赤いスカーフ顔に映え、革命止まることはなし」。幼児の頃から永久連続革命である。空恐ろしい体育だ。

 革命のために遊べ、体を鍛えよというわけだが、時代が時代である。子供の遊びにも国防意識が反映される。高い飛び込み台から飛び出す子供を描く「飛び込み」は、「小さな体と大きな心、幼い時から鍛えれば、海の守りの最前線で、きっと大きな働きが」。手りゅう弾の模造品を右手に、いま投擲しようという男の子が描かれた「投擲」は、「小さな小さな手りゅう弾、敵は怯えるばかりです。今日は投擲訓練で、明日は敵を殲滅だ。階級敵に民族の、恨みの炎は燃え盛る。深い恨みを力とし、帝国主義に修正主義、反革命までひとまとめ、一網打尽にやっつけろ」

 革命、それに敵の殲滅ときたら、順序として次のテーマは友好となるだろう。男女の子供のラリーを描いた「ピンポン」は、「ピンポン玉は友誼の種よ、五洲三大洋(せかいじゅう)に播きましょう」。卓球会場だろうか。花束を手にした中国の少女が原色の民族衣装の黒人女性に抱きか掛けられている「友誼の花」は、「私は両手の花束を、会場高く掲げます。それをどなたにプレゼント。大きな瞳を大きくし、『お花は友誼のために咲き、世界中からお友達。中国の子(わたしたち)の心は一つ、友誼を世界に広げるの』」

 かくして「毛主席万歳」となり、「東の空に太陽が、昇り祖国は輝くぞ。僕らは生きるこの時代、党の光が胸いっぱい。恵みの雨が苗育て、すくすく元気に育ちます。心の底から毛主席、太陽に向き花開く」。ここでいう太陽が毛沢東を指すことは、いうまでもない。

 あれから30数年。「すくすく元気に育」った「毛沢東のよい子」は、いま何処。  《QED》